取材ノート:マンガやアニメが秘める「ソフトパワー」を観光に活かす

  • 2009年3月31日(火)
 近年、マンガやアニメ作品の舞台となった土地をファンが実際に訪れる「聖地巡礼」という現象が話題になっている。先ごろ、開催された「東京国際アニメフェア2009」では、「アニメとロケーションツーリズムにおける可能性〜聖地巡礼と観光資源〜」をテーマにシンポジウムが行なわれた。聖地巡礼のブームを作り続けている要因はどこにあるのか。今後マンガやアニメが秘めている「ソフトパワー」を観光振興や地域振興にどのように活かしていけばいいのか。ディスカッションでは、今後のキーワードが語られた。
                                                       
                                               
観光は文化資源の価値や気持ちの共有・交流が大切に

 ディスカッションに先立って基調講演をしたのは、北海道大学観光学高等研究センター准教授の山村高淑氏と鷲宮商工会相談員の坂田圧巳氏。内容は「アニメ作品『らき☆すた』による埼玉県鷲宮町の旅行誘致に関する一考察」について。坂田氏によると、アニメ雑誌「月刊ニュータイプ」の付録で、鷲宮町の鷲宮神社をはじめとしたいくつかのスポットが同作品の舞台の一部であることが紹介され、ファンたちが“聖地巡礼”と称して登場した場所を訪れるようになったという。鷲宮神社ではファンたちが絵馬に作品中に登場する人物の絵を描くことで盛り上がりはじめ、参詣者数は2008年に県内3位の約30万人、2009年には県内2位の約42万人に達した。

 こうした動きの中で、商工会は版権元に交渉し、町独自のオリジナルキャラクターグッズを制作して町内の複数の商店にて販売。さらに作者や声優を巻き込んだ公式イベント開催などの企画を立ち上げ、ファンたちのために特別住民票の交付もするまで発展していった。

 この鷲宮町の動きに対して、アカデミックな持論を展開したのが山村氏。アニメをはじめとしたメディアコンテンツと地域振興のあり方に関する研究をしている山村氏は、鷲宮町の事例を分析し、成功した理由のひとつとして(1)メディア(媒体)としてのコンテンツに高い質と魅力があったこと、(2)それを介して行なわれるコミュニケーションに敬意と愛があったこと、さらに(3)そこから生まれる交流に人間味があったことをあげている。日本の観光の流れを見ると、かつては商品を提供する企業主体の観光であり、有名観光地などの文化資源をそのまま商品化して取引し、消費されていたにすぎなかった。しかし現在はより選択肢が多様化する時代となり、「個」対「個」、双方向性からネットワークの時代へと入ってくると、観光は文化資源の価値や気持ちの共有・交流が大切になり、商品そのものではなく、ネットワークの接点をはじめとしたプラットフォーム作りがより重要になってくるとしている。


現実世界と創作世界の双方でアピールする効果

 基調講演後のパネルディスカッションの登壇者、モデレーターを東京大学大学院情報学科准教授の七丈直弘氏、パネラーはピーエーワークス専務取締役の菊池宣広氏、ファンワークス代表取締役の高山晃氏、前出の山村氏、坂田氏。鷲宮町の事例に加えて、人気アニメ作品「true tears」の舞台となった富山県南砺市の事例、東京都杉並区の地域マスコットキャラクター「なみすけ」などの事例をあげ、「地域でのコンテンツに関する取り組みの将来」が議論された。

 富山県南砺市を中心に活動するアニメ制作会社ピーエーワークスの菊池氏は、「true tears」の舞台を富山県とした理由を、夢や恋、友情について男女5人の高校生が思い悩み、等身大の青春時代を駆け抜ける懐かしくも切ない同アニメのストーリーにあった「都会にはない、富山という地方独特の空気感があるから」と説明する。

 アニメの世界だからといっても創造の世界ではなく、実際に現地にあるものを作品の中に登場させることによってリアリティが増し、ファンたちは親近感が持てた。一方で、南砺市を舞台にしていながら同じ富山県内でも遠く離れた氷見の海岸が自転車ですぐに行けるという、現実ではありえない世界も作りだしているが、細部まで細かい描写をしているためアニメならではの世界観を形成。そういった面で実写映像とは違う富山県のアピールにもつながったという。


これからのキーワードは「地方の時代」

 インディーズアニメをプロデュースする専門企業ファンワークスの高山氏は、「これからは地方の時代」と語る。今までのアニメーションは多くの人が手分けをして長時間かけなければ作ることのできないハードルの高いものであったが、近年ハードとソフトウェアの高性能と低価格が実現し、個人制作でクオリティの高いアニメーション作品を作ることが可能になった。そこで事業をスタートさせ、東京都杉並区から依頼を受けた仕事が「長く愛される区のキャラクター制作」。区の少子化対策の一環で、子どもたちが使用する学校のグッズをはじめ現在では街のいたるところに「なみすけ」というキャラクターを見るまでに発展している。「キャラクターを生み出した数やグッズの販売個数などが経済効果の指標になるが、大切なのは街のブランディングをすること」と高山氏。キャラクターを作って終わりではなく、街全体のイメージをキャラクターを使ってどのようにプロデュースしていくのかが、大きな鍵となるようだ。

 今後、世界はますますデジタル化が進み、マスの時代から個の時代へと移行していく中で、個人の情報発信が重要になる。どの地方であっても世界の中心になる可能性がある時代において、自ら街のブランディングをし、多くの人々にアピールできるようなプロデュースをしていくことが、地域振興とともに観光振興のキーワードになってくるだろう。今回のパネルディスカッションでは、こうしたキーワードとともに、最終的には「人と人との関わりあい」や「人の心」が必要であることが、改めて伝えられた。


取材:安田素久

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