itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

チャーター活性化、リスクの分散・低減がカギ−全関係者で協力して促進を

  • 2009年3月10日
 日本旅行業協会(JATA)が2月24日に開催したJATA経営フォーラム2009の分科会Bは、「ビジネス拡大!チャーターの積極的活用!!」をテーマにしたパネルディスカッション。2008年12月に国土交通省がITCチャータールールを大幅に緩和したことを受け、いかにチャーター便を活性化して旅行需要を取り込むかを議論するのがねらいだ。JATA・VWC推進室副室長の田端俊文氏がモデレーターを務め、コメンテーターの近畿日本ツーリスト(KNT)執行役員旅行事業創発本部海外旅行部長の權田昌一氏、ひろでん中国新聞旅行取締役会長の松江洋氏、国土交通省航空局監理部航空事業課長の篠原康弘氏がこれまでの取り組みや課題について語った。


▽チャーターのメリットは「地方需要活性化」と「ピーク期の座席確保」

 田端氏は冒頭、旅行・航空業界を取り巻く環境の厳しさが増して、航空会社の路線再編やレジャー用座席の減少がさらに進むことが予想されるなか、チャーター便の活用は不可欠と強調。観光立国推進基本計画でも国際旅客チャーター便の積極的な推進が盛り込まれている。篠原氏も、「(航空局は)従来どうしても航空会社を代弁する立場になりがちで、定期便をいかに保護するかが主眼になっていた」ものの、現在は「定期便もチャーターも両方伸ばせるような仕組みにしていくため、航空と観光をいかに一体的に行政として考えるかを重視している」と語る。

 權田氏はチャーター便について、地方需要の活性化と首都圏のピーク時の座席の確保の意義が大きいと語る。特に成田空港のオンラインチャーターが可能になったことは、「高需要期のオントップが可能になり、大きなビジネスチャンス」という。KNTでは2008年に全体の海外旅行取扱人数が前年比7%減となったものの、チャーターは14%増。これは、ロタ島やスイス、韓国の襄陽など、積極的に独自の展開を図った結果だ。ただし、全体の取扱人数に占めるチャーター利用者の割合は5%以下で、「15%程度には拡大したい」との目標を掲げている。今年も前年比5%増の4万人をめざす方針だ。

 松江氏も、地方の旅行会社の立場から「地方のエージェントにとって、チャーターは非常に大きな収入になる」とメリットを説明。ひろでん中国新聞旅行が、広電観光旅行事業部門と中国新聞トラベルサービスであったころから各社で継続的に取り組んでおり、統合後も「5年目で30回以上は実施している」という。また、昨今は船のチャーターも実施。年に2回から3回程度、ウラジオストクや済州・釜山に向けて、400名規模の船をチャーターしており、これも「大きな収入になる」という。なお、航空機のチャーターには地元空港への定期便誘致のためのプログラムチャーターも多く含んでおり、「地方の宿命ではないか」と語る。


▽外国航空会社のリスク軽減に仕組みづくりを

 一方、2007年度のチャーター実績は、2007年5月にITCチャータールールの緩和があったものの、全体の6561便のうち外国始発が66%の4330便を占め、日本始発は34%の2231便にとどまった。田端氏は、「旅行者が集まるか、確実に飛ぶか」といったリスクもあってチャーター便の利用が進んでいないと分析しつつ、昨年末の更なる規制緩和による活性化に期待を示す。ただし、篠原氏によると、日系航空会社は経営状態の悪化に加え、2010年の首都圏空港の再拡張を控えてチャーター運航を増加しにくい環境にあり、外国航空会社を利用する機会が増える可能性が高くなる。

 議論では、外国航空会社を使用する上でのリスクについて指摘された。外国航空会社について權田氏は「本当に飛んでくるのか、あるいは機内食を積んであるか」といった基本的な不安や、その不安を解消する役目の日本地区総代理店(GSA)の財務状態が脆弱な場合があるといったリスクを指摘し、何らかの対策や仕組み作りが必要と説明。松江氏も、「地方では、GSAを含めて交渉の窓口がないのが現状」とし、さらに「GSAがどこまで責任を持ってくれるのか」と指摘した。

 こうした意見に対して篠原氏は、「GSAの問題はなかなかツテがない」と困難さを説明。ただし、運航認可の段階で、業界と行政の知恵や経験が結集されればリスクが下がるような取り組みも可能ではないか、という。その上で、外国航空会社がチャーター事業を成功させるようになれば、日系航空会社の戦略にも変化が起きるのではないかと期待を語った。




▽地方では旅行会社同士の協力が重要−「LLP」も紹介

 チャーター便には地方需要活性化の期待もかかる。この点について松江氏はまず、「顧客のニーズを把握し、顧客の立場に立った上でのチャーターが必要」と強調。その上で、地方では「自治体とも連携して促進協議会をつくっている」ことを紹介した。これは、商圏がせまいことから、販売する旅行会社同士の協力も必要なため。例えば一社が販売に苦戦して値下げすると、市場が狭いためその後のチャーター商品にも影響が出てしまうという。また、權田氏も、ロタやスイスなどでは地場の旅行会社とアライアンスを組んで共同で販売するケースもあるが、例えばスイスの場合、「一都市滞在ではないので、バッティングしないコースを相談できる」ことが共存の対策になっているとした。

 また、地方空港の場合、広島にとっての関空や福岡空港など、比較的近距離にある空港の定期便との競合も課題の一つ。広島県では「県民280万人のうち出国者が28万人であったが、広島空港を利用した人は13万人から14万人」(松江氏)だ。これは、チャーター料金が安くなく、「仮に安く仕入れられたとしても、定期便の運賃より下げられない」(松江氏)ことも一因という。

 このほか田端氏は、チャーターのリスク軽減策としてLLP(有限責任事業組合)の仕組みも紹介。LLPは、経済産業省によると出資者(組合員)が出資額の範囲までしか責任を負わない「有限責任」や、柔軟に損益や権限を分配できる「内部自治の徹底」、組織段階では課税せず、出資者に直接課税する「構成員課税」といった特徴を持つ事業体。チャーターにおいても、より多く販売した旅行会社により多くの収益を分配するなど、複数の会社が柔軟に連携できることがメリットだ。