世界のユニーク・フェスティバル(2)ネコの仮装祭り(ベルギー)

  • 2009年1月14日
 ベルギーといえば、オメガングやアトの巨人祭など、世界的に有名なお祭りの多い国のひとつ。大きな羽をつけた道化師の「バンシュのカーニバル」や、「モンスの守護聖人祭」などはユネスコの世界無形遺産に登録されており、日本からも祭りを目的とするツアーが販売されている。祭りが人気の観光素材となっているデスティネーションだ。

 フランドル地方の町イーペルで、3年に1度、5月の第2日曜日に行なわれるのが「ネコ祭り」。2009年はその開催年にあたり、予定日は5月10日だ。珍しいネコ祭りは外国からも多くの観客を集めており、前回開催時(2006年)の外国人のイーペル宿泊数は11万2464泊。今年は日本からもベルギー・トラベルセンターをはじめとする数社がツアーを企画している。

 祭りの日、町はネコに扮した人でいっぱい。歴史絵巻のようなパレードにはじまり、巨大なネコの山車「ネコの王様」や「女王様」も登場。パレードに参加できなくても、会場でフェイスペインティングをしてもらいネコに変身。町中はネコグッズであふれ、右を見ても、左を見てもネコ、ネコ、ネコ……。

 祭りのハイライトは「ネコ投げ」だ。といっても本物を投げるわけではなく、繊維会館の鐘楼から黒ネコのぬいぐるみを次々に投げ落とす。これを手に入れると幸せになるといわれており、会場はキャッチしようとする人々で熱気を帯びる。そして最後に魔女裁判の裁判劇が行われ、魔女の人形を火あぶりに処して祭りは終了となる。

 ネコ祭りの由来には諸説ある。ネコは中世ヨーロッパで魔女の使いと信じられており、かつてネコが多くいたイーペルの人々は、周辺の町の人たちから「ネコを崇拝する異教徒」といわれた。それに対し、疑いを晴らすために城からネコを投げ落して殺したのが祭りのはじまりという説や、ペストが大流行した時、イーペル市民はネコを多く飼い、厄を負わせて塔の上から投げたのがはじまりだという説などがある。

 かつての祭りは年に1度、開催され、「ネコの水曜日」と呼ばれた最終日には鐘楼の上から生きたネコを投げ落としていた。数世紀続いたこのイベントは1817年に取りやめとなったが、1938年、生きたネコの代わりにぬいぐるみを落とす形で復活した。現在のネコ祭りは、この伝統行事にパレードが加わったものといえる。

 訪問にあたっては、イベントは夜まで続くのでイーペルに宿泊するのがベストだが、客室数は多くない上、多くの観光客が集中するので宿泊施設の確保は難しいという。ベルギー・フランダース政府観光局によると、「イーペルへはブルージュから約40キロメートル、ブリュッセルから約90キロメートルなので、日帰りで訪れるのも可能」とのこと。会場には観覧席が設けられるので、全体をゆっくり見学できるそうだ。ただしチケットは、現地の観光局が2月ごろに発売する予定なので、あらかじめ購入しておく必要がある。3年に1度のこのチャンス。ちょうど4月から5月上旬はベルギーや、周遊で組み込まれるオランダの花が美しいベストシーズンだけに、今年はネコ祭りを含めて旅をすれば、さらにスペシャルな体験ができるだろう。


▽ベルギー・フランダース政府観光局 ネコ祭り
http://www.visitflanders.jp/news_letter/?p=16


▽イーペル市観光局 Cat Parade
http://www.ieper.be/ieper_en.aspx?SGREF=13725


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