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ハワイ体験レポート(29)蒸気機関車に乗ってのんびりとラハイナへ

  • 2008年9月11日
蒸気機関車に乗ってのんびりと
趣きが残るかつての首都ラハイナへ


 かつてはサトウキビを運搬し、現在は観光用に運行している蒸気機関車「シュガー・ケイン・トレイン」に乗って、カメハメハ大王の時代に首都として栄えたラハイナの町に行ってみよう。捕鯨で栄えた時代に思いを馳せ、面影が残る町並みを楽しみたい。列車の旅は沿線の景色を眺めてのんびりと満喫できるのが魅力だろう。大自然だけではない、マウイの魅力を見つけた。(取材:堀内章子)
                                                              


蒸気の迫力に大人も満足のシュガー・ケイン・トレイン

 マウイ島では現在も蒸気機関車が運行している。「シュガー・ケイン・トレイン」と呼ばれるこの列車はかつてマウイのサトウキビ産業が栄えていた頃、運搬用に使用されていた。その歴史は古く、1860年から1952年まで、サトウキビの増産と事業の拡大に貢献した。その後、サトウキビの運搬はトラックに代わり、この蒸気機関車は南カリフォルニアの鉄道収集家に譲られたが、不幸にも野火で焼失してしまう。ラハイナ・カアナパリ&パシフィック鉄道が1969年、復活を目的に蒸気機関車をアメリカ本土から輸送し、以前の汽車とそっくりに改装。これが「アナカ」と呼ばれる車両であり、現在も現役で走っているシュガー・ケイン・トレインだ。

 シュガー・ケイン・トレインは、プウコリイ駅とラハイナ駅を結ぶ。どちらの駅からも乗車でき、プウコリイ発のみ途中でカアナパリ駅に停車するが、乗り降りはできない。片道約40分の汽車の旅だ。始発駅のプウコリイ駅はプラットフォームと目印の赤い貨物車両があるだけでとてもシンプルだ。緑と赤で彩られた先頭車両に、花のペイントを施した4車両がつながっている。車両に乗り込み、振動を感じるといよいよ出発。

 午前10時15分、列車は駅を出た。窓はオープンで、そこから入ってくる風がとても心地よい。しばらくすると、とても気さくな車掌さんがやってきて、乗客に話しかけていた。ロコとのふれあいも旅の楽しみのひとつだ。前方の左側にはゴルフ場と高級住宅地を眺め、右側には海岸沿いに伸びるルート30が並行する。海沿いをゆったりと走るそこからの景観は素晴らしく、海の向こうにはラナイ島も見える。乗りあわせたアメリカ本土からの観光客と思われる家族は景色が変わるたびにカメラを構え、開放的な窓からたくさんの旅の思い出を収めたようだ。車内にはスピーカーが設置されており、シュガー・ケイン・トレインの歴史や沿線の見所を通過する際に教えてくれる。

 折り返し地点のラハイナ駅に到着すると、30分ほど停車。駅には土産物の店や自動販売機、トイレもあり、ちょっとした休憩には十分だ。その間、蒸気機関車は向きを変え、再びプウコリイ駅をめざして出発する。そしてまもなく終点のプウコリイ駅に到着というときに、この列車の旅のハイライトシーンが訪れる。

 シュガー・ケイン・トレインは単線であるため、終点前に次の運行に備えて先頭の機関車部分を車両からはずし、その先のターンテーブルで方向を変えて、一番後ろの車両に連結する。この客車とすれちがうその瞬間に、機関車の側面から勢いよく蒸気を噴き出すのだ。10メートル以上離れている車両まで蒸気が届き、車両内にまで水滴がバァーッとかかる。この新鮮な体験には本当に驚かされた。このとき一番前の車両に座っていた私がしっかりと水滴を浴びたのはいうまでもない。そうして旅はあっという間に終了。レトロでかわいらしい見た目に子供向けのアトラクションかと思いきや、大人も十分に楽しめる。




趣の残るかつての首都ラハイナ

 チケットは往復料金のみだが、片道で下車することも出来るので、ラハイナに着いたら、下車して観光してみよう。ラハイナはカメハメハ大王の時代の首都であり、1825年から1860年ごろの捕鯨全盛期には捕鯨基地として栄えた町。1962年に国立歴史保護地区に指定され、昔の古きよき時代の建物や景観をそのまま残している。町の中心から海に沿って走る約2キロメートルのフロント通りには現在、ギャラリーやレストランなどセンスのいい店舗が立ち並ぶ。歩いて周れるところに歴史的な建造物がたくさんあるので、ぶらりと散策するのがおすすめだ。

 フロント通りにある大きなバニアンツリーの後ろに建つ「オールド・ラハイナ・コートハウス」は、捕鯨全盛期に罪を犯した船員を裁く裁判所であった。現在はビジターセンターやギャラリー、郷土博物館として観光スポットとなっている。そしてそのすぐ横にある赤い屋根で緑色の建物は、ラハイナのランドマーク的存在のホテル&レストラン「パイオニア・イン」。1901年にオープンし、今もその当時の姿を残している。1950年代までは西マウイ唯一のホテルとして、旅行者たちで賑わっていたそうだ。そんな町並みに魅かれ、多くの観光客が足を運ぶ。

 また、懐かしい景観とあわせて人気を集めているのが、パイオニア・インの目の前の海岸沿いに立ち並ぶ数々のブースだ。ここは、クルーズツアー、魚釣りツアー、クジラのブリーチングを見るツアー、西マウイの景観を海から見るツアーなど豊富なツアーを取り扱っており、みんなここから様々なアクティビティに出かけてゆく。

 もし捕鯨について興味を持ったなら、より詳しく知れる場所がある。ラハイナから車で10分ほどのリゾート地カアナパリの「ホエラーズビレッジ博物館」だ。ここには、かつて捕鯨で栄えた当時の様子や貴重な資料や品々が展示されており、捕鯨の歴史を学ぶことができる。日本語のオーディオツアーもあるので安心だ。当時、捕鯨船で働く人たちの賃金はわずかなもので、いったん航海に出ると5年は戻れず、クジラを捕まえるために長い時間をずっと待っていたという。ラハイナはそんな人々にとって、おいしいものが食べられる天国のような場所であったのだ。



心地よい香りに包まれリゾート気分を満喫できるアリイ・クラ・ラベンダー


 西マウイから転じ、カフルイ空港から東南方面へ。一
面に広がるサトウキビ畑を横目にハレアカラハイウェイ
を走り、その後、田園風景の広がるクラ地方に到着する。
ハレアカラの中腹にあるアリイ・クラ・ラベンダーは、
クラ地方のアップカウントリーと呼ばれる。車から降り
ると長袖のカーディガンがあるとちょうどよい涼感で、
常夏の島ハワイのイメージとは異なる。キヘイを一望で
きる眺めもまた素晴らしい。

 オーナーのアリイ・チャン氏はフレンチラベンダー、
スパニッシュラベンダーなど45種類ものラベンダーが育
つ、10エーカーもののラベンダーガーデン内に邸宅をか
まえる。それぞれのラベンダーの香りも微妙に違うこと
に感心しながら散策していると、そこに漂う優しい香り
に、身も心も洗われた気持ちだ。チャン氏によると「こ
のクラ地方は降水量が少ないが、曇りが多い」という。
この曇った湿り気のある気候がラベンダー作りには最適
で、今年1月に植えた新しいラベンダーも既に花を付け
ているものがあった。そのほか、オリーブツリー、レモ
ンライム、サボテンやプロテアの花も咲き、見応え十分
だ。

 6月から9月が見頃で、ラベンダーの香りと美しい景色
から、ここでウエディングをあげるカップルもある。現
在は25の業者とパートナー契約を結び、多くのラベンダ
ー関連製品を販売している。その種類は多岐に渡り、女
性が好みそうなオーガニックのボディバタークリームや
ハーブティーから、ラベンダーを使用したペッパーシー
ズニング、はちみつ、チョコレートブラウニー、コーヒ
ーなどなど、庭園の中にあるギフト・ショップで販売さ
れているのでお土産にもぴったりだ。