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シンガポール航空、路線網再編で関空/バンコク線運休−「過度な価格競争に勝者なし」

  • 2008年4月4日
 シンガポール航空(SQ)は、路線ネットワーク再編の一環で、5月18日出発分から関空/バンコク/シンガポール線を運休する計画だ。SQでは、利用者の需要の変化に柔軟に対応することが目的と説明しており、需要の伸びが高く、収益性も見込めるオーストラリアや中国、インドなどの路線を増便する計画だ(詳細は下記)。関西/バンコク間は日本航空(JL)、タイ国際航空(TG)が運航しており、航空券、旅行商品ともに料金競争が厳しくなっていたとの指摘がある。

 SQは4月1日、旅行会社に通知。ジェイティービーとエイチ・アイ・エスは「それほど大きな影響はなく、消費者にも不利益は生じない」としている。ただ、航空会社の振替に追われている旅行会社もあるが、SQは「誠意をもって対応する」(SQ広報部)方針だ。今後の影響として、需要が減少する可能性があるが、旅行会社からは「座席供給量が不足するのは大規模なコンベンションの際など、年に数回ではないか」と比較的、落ち着いた反応もある。タイ国政府観光庁(TAT)大阪事務所は、「需要が大きく落ち込んだ状況ではなかった」と惜しみつつ、「夏に向けてアメージング・タイランドのキャンペーンを継続し、需要を喚起する」とした。


▽オピニオン−過度な価格競争に勝者はない

 関西発のレジャー路線は、概ね価格競争が激しい。関空路線の撤退では、「ロードファクターは高いにも関わらず、イールドは低い」と航空会社から指摘されており、これはサイパン線、アメリカ線の減便にもつながっている。今回のSQの関西線の運休についてSQは「利用者の需要の変化に柔軟に対応する」としかコメントしていないが、一部の旅行会社からは「ロードファクターは高いものの、イールドが低かったのだろう」との指摘がある。原油高による燃油サーチャージ額の徴収をして補填しても、路線を維持するほどではなく、マーケットニーズにあわない価格を提供している市場環境がSQ撤退に見られる根深い深層だろう。

 安く仕入れ、安く売っては商売の根幹に関わる。それでは、旅行会社も航空会社も収益は悪くなるばかりだ。世間は物価上昇で騒ぐ中、航空運賃や旅行代金が下がることは、ゆがみがあるということだ。その異常事態の結果が、路線撤退という結末なのだろう。旅行会社だけでなく、航空会社も価格と利益のバランスある競争をしなければ、旅行市場は成熟しない。さらに、消費者に旅をしてもらえなければ、損をするのは、旅行会社も航空会社も同じだ。2000万人を目指していく旅行業界にとって、今ある定期便を大事に、かつ、利益を確保しつつ、旅行者の拡大を目指していくには、旅行会社と航空会社は価格の叩きあいから今日にでも脱却するべきではないか。(オピニオンのみ、鈴木)


▽SQ増減便予定(都市名/現在の便数/変更後の便数/実施日)
ブリスベン/週14便/週17便/2008年4月3日以降
(ブリスベン/週17便/週21便/2008年7月2日以降)
シドニー/週21便/週24便/2008年4月8日以降
(シドニー/週24便/週28便/2008年6月1日以降)
オークランド/週11便/週14便/2008年3月30日以降
ホーチミン/週17便/週21便/2008年3月30日以降
ハノイ/週7便/週10便/2008年7月2日以降
上海/週28便/週35便/2008年3月30日以降
チェンナイ/週10便/週11便/2008年3月30日以降
デリー/週7便/週9便/2008年3月30日以降
(デリー/週9便/週14便/未定)
台北/週14便/週17便/2008年10月4日
バンコク/週39便/週41便/2008年5月18日以降
ロサンゼルス(台北経由)/週4便/運休/2008年10月1日以降
大阪(バンコク経由)/週5便/運休/2008年5月17日以降(日本発着2008年5月18日以降)

※増減便予定の表に関して修正致しました。(4月4日15時20分 編集部)