インタビュー:フィンランド政府観光局日本局長 能登重好氏

  • 2008年3月12日
独自の発想で「トレンドづくり」に成功
素材に頼らない旅行の「目的」の創出へ


フィンランドの2007年の日本人宿泊ナイト数は前年比5%増を記録した。地道に続けるプロモーション活動で「デザイン」というイメージが定着し、着実な需要に結びついている。また、この「デザイン」を目的とする旅行は、各デスティネーションが悩むシーズナリティに左右されない利点がある。フィンランド政府観光局日本局長の能登重好氏、マーケティング・マネージャーの駒木左恵子氏に聞いた。

 2007年はグループが好調で、冬、夏の需要が獲得できた。FITでも視察目的の需要が動いていると聞いている。繁忙期、閑散期を生み出すシーズナリティを是正するねらいで、5年ぐらい前から「種まき」をしており、徐々に実りつつある、というところか。2000年ごろに「デザイン」を打ち出し、2002年からフィンランド・カフェを始めた。フィンランドへの「旅行」を前面に打ち出さず、消費者に対してフィンランド自身の関心を高めていくねらいであったが、結果的に成功している。映画「かもめ食堂」も昨年の旅行需要には大いに貢献したのだろう。

 鍵となるのは期間限定のフィンランド・カフェの出店だが、これにあわせ「フィンランド・トラベルノート」と題したガイドブックも新たな道筋を作り出している。トラベルノートは2、3年前に始めたもので、この内容に即した旅行のセミナーも開催しているが、取り上げているものは非常に細部な要素。ヘルシンキから車で1時間ほどの場所にあるサウナの前で撮った写真を使ったり、ディープなデザイン・ディストリクトを巡るものを掲載したりと、本当に興味、関心を持つ人でなければセミナーでの話を聞けないだろう。そのようなセミナーに参加したいと意欲的な人たちが集まるようになってきた。最近、欧州方面で注目を集めている東欧と比べ、比較的観光の素材が少ないという視点から考えると、30名程度のパッケージ旅行を10年ぐらい受け入れていけるかという疑問もあり、FITを主軸とした「トレンドづくり」からはじめたことが今に至っている。

 プロモーションも消費者を大きく2つに分けて展開している。一つはフィンランドに行ったことのある人に対して、「よりディープに」という意欲をかきたてる方向性。もう一つは新たな市場への取り組みで、「無から訪れる」意識を盛り上げていくことだ。後者は観光局だけで取り組めることではないが、「トレンドづくり」は出来るだろう。

 将来的には20万泊の達成をめざしていく。2010年ごろに達成できると以前は考えていたが、これには年5%増の増加率を維持していかなければならない。観光局として、この目標は掲げたいところであるが、急速な増加は「バブル」的な需要もはらんでしまう。「何もない」を利点として、トレンドづくりに着手したからこそ、急激な伸びではなく着実な需要を積み重ねていくことに重心を置いていきたい。トラベルノートで紹介するサウナ、あるいはデザインなどが最も主要な旅行の目的で、パッケージツアーはこうした旅を実現する受け皿だ。こうした発想を基にしたプロモーション活動を今後も継続していく予定で、4月ごろをめどに「トラベルノート2」として、第二弾を用意している。また、旅行業界を対象に恒例となる「フィンランド・ナイト」を5月下旬に開催し、着実に生まれてきた需要を摘み取ってもらいたいと考えている。


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