新型肺炎、海外旅行需要への影響はまだ見えず-湖北省に「渡航中止勧告」も

  • 2020年1月24日

 中国の武漢市を中心として新型コロナウィルスによる肺炎が拡大し、日本でも一般メディアによる報道が過熱傾向にあるなか、1月24日に大手旅行会社5社にヒアリングしたところ、少なくとも現段階では中国やその他の方面への旅行需要に影響は出ていないとの回答が得られた。

 ヒアリングしたのは、観光庁による主要旅行会社の取扱概況調査において2019年度上期の海外旅行取扱額が上位だったJTB、エイチ・アイ・エス(HIS)、阪急交通社、KNT-CTホールディングス、日本旅行の5社。

 そもそも武漢自体がレジャーのデスティネーションとしてメジャーではないこともあり、ツアーを設定していたのはJTBと阪急交通社、KNT-CTのクラブツーリズム。いずれも、外務省が1月23日に感染症危険情報をレベル2に引き上げたことを受けて催行中止を決定している。外務省はその後、24日午後には武漢市を含む湖北省全域にレベル3の渡航中止勧告を発出しており、今後も対象エリアの拡大やレベルの引き上げが進む可能性がある。

 中国の他都市へのツアーについては、一部の会社で「(キャンセルが)ちらほらとある」ことが聞かれたものの、目立つほどではないとの回答。阪急交通社では、「キャンセルもあるが新規予約も入ってきている」という。ただし、一時期は日中関係の悪化などによって急減した旅行需要が回復しつつあったことについて、ブレーキがかかることを懸念する声もあった。

 いずれにしても今後の動向次第ではあるものの、今のところSARSの際のように方面に関係のない渡航控えなども見られないとのこと。中国行きを含めて、取消料の無料化などの特別対応を実施している会社もなかった。

 なお、Trip.comグループは発症済み、または発症が疑われて空港で隔離された顧客などについてグループのサイト上で予約したすべての旅行商品を無料でキャンセルできるようにしていること、1月31日までの武漢発着の全国内線と国際線、同じく1月31日までの武漢エリアのホテルやチケット、レンタカーなどは無条件で無料キャンセルに対応していると発表している。

 このほか、武漢は日系企業も多く進出する都市で、業務渡航需要も大きいと見られるが、非公式ながら回答を得られた業務渡航系旅行会社によると、特に禁止や自粛の指示は出ておらず注意喚起に留まっているところ。また春節のタイミングであるため、出張の必要性自体がそもそも少ないという。

 また、航空会社側では、武漢市が「封鎖」されたことを受けて、全日空(NH)が24日15時の時点で24日から31日まで成田/武漢線の欠航を決定(武漢発便のみ2月1日まで)。2400人に影響が出るとしている。2月29日搭乗分までの同路線の航空券については、手数料なしでの払い戻しに応じる特別対応を実施する。

 春秋航空日本(IJ)も週3便の成田/武漢線を「当面の間」運休すると発表済みで、他の中国線全線でもマスクを無償配布しているほか、除ウィルス嘔吐物凝固剤、殺菌性消毒剤なども機内に搭載しているという。中国南方航空(CZ)や中国東方航空(MU)も中国線について、欠航や払い戻しの案内を日本語サイト上でしている。

 さらに国際航空運送協会(IATA)は、世界保健機関(WHO)が旅客や貨物の輸送については現時点でなんの制限も設ける必要はなしとしていることなどを紹介する声明を発表している。

 このほか、AIG損害保険は取引先旅行会社宛に海外旅行保険での新型肺炎の取り扱いについて説明する書面を送付。これによると、保険の責任期間が終了してから72時間以内に医師による治療が始まった場合は治療救援費用と疾病治療費用の補償対象となるものの、72時間を超えてから始まると対象外となる。このため、今回の新型肺炎は潜伏期間が平均7日間とされていることから、体調の変化を感じた際には早めに受診するよう勧めている。

 なお、今後「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の第6条で規定されている第1類感染症から第4類感染症として認定されると、責任期間終了後30日以内の治療開始まで対象が拡大するという。

※追記
(編集部 2020年01月26日18時05分)
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