世界水準の観光地の高みに登るには 全旅連青年部・西村総一郎次期部長に聞く(1)

  • 2016年11月1日

 全旅連青年部次期部長に就任予定の西村総一郎さん(兵庫県城崎温泉・西村屋)に、前号(トラベルニュースat10月10日号)に引き続き、宿泊業界を取り巻く諸課題の対応について話を聞いた。今回は、宿泊業界の健全経営につながる地域づくりを語った。

「日本に来たら城崎温泉に」と思ってもらう

-売上を伸ばす城崎温泉の方策は。

 売上を伸ばすというより、中長期的な立場に立って、いかにして将来世代により良いまちを残すのかということを考えて取り組んでいます。現在まちの魅力を損なっているのは温泉街の車の多さで、交通量の削減が必要だと感じ、以前計画されていて現在凍結されているバイパス計画を実現することに2012年から取り組んでいます。

 当時の考えはこうです。豊岡市の人口は8万5千人程度で、これから人口が毎年700人ずつ減っていくと予測され、2020年までに5千人以上が減ってしまいます。国の試算によると、定住人口1人当たりの年間消費額が124万円です。地方なので消費単価が安いと仮定して100万円、定住人口が5千人減るなら50億円も地域の消費額が減る計算になります。では、その50億円を宿泊で埋めようとすると、宿泊客が1人2万5千円を消費してくれると仮定して20万人分です。当時宿泊客は60万人でしたが、単純に20万人泊を増やせれば、この地域の経済規模は維持でき、さらに、雇用が増えるのでお釣りが出るぐらいになります。

 では20万人を増やすためにはどうすればいいのか。これぐらいの数を増やそうと思えば、イベントなどではなくて、根源的にまちの魅力を高めなければなりません。そんな高みに我々が登ろうと思ったら、車の問題に直面しました。温泉街の交通負荷を下げて、安心してのんびり散策してもらう環境を作ることが必要だと感じました。

 お越しいただいた方はご存知だと思いますが、城崎温泉は三方を山に囲まれた谷あいの温泉地です。動線を確保した上で、例えばスイスのツェルマットのように先進的な交通体系を採り入れて観光地としての魅力を高め、その先には世界水準の観光地を目指すということが目標です。これからは日本に来たら城崎温泉に行かなければと思ってもらう地域にならなければなりません。

 温泉街の横を流れる円山川にかかる橋が老朽化し、新しい橋の工事が間もなく始まります。バイパスは新しく架橋されるものの延長線にあり、地域に住む住民の意識を上げるためにワークショップや社会実験を行なったり、行政に働きかけたりして、バイパスの整備を具体化するよう働きかけを強めています。


(16/10/31)


情報提供:トラベルニュース社