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JAL大西氏やJTB田川氏、訪日の地方分散へ、情報発信など訴え

JL大西氏 日本航空(JL)取締役会長の大西賢氏は7月21日、日経BP社主催の訪日旅行展示会「インバウンド・ジャパン2016」で講演し、2020年に4000万人、30年に6000万人の訪日旅行者数の目標達成に向けて地方への需要分散が不可欠であると強調した。また、直後にセミナーを担当したJTB代表取締役会長の田川博己氏も、航空機チャーターやクルーズ船の活用を含めた地方誘客の重要性を指摘している。

 大西氏の講演テーマは「インバウンド促進のための観光価値創造と地方創生に向けた取り組み」。まず、世界の人口増加率や経済成長率を考慮すると30年の人口流動は15年の1.8倍となるとの見込みを披露し、15年の訪日外客数1974万人を1.8倍しても3500万人超で6000万人にまったく及ばない可能性を紹介した。

 また、宿泊施設の稼働率も、全国平均では余裕があるものの東京や大阪では客室数が飛躍的に増えることがなければ需要が供給を常に上回るような事態もありえるとし、ゴールデンルートのみで今後も旅行者の大半を受け入れていくのは不可能であると懸念。その上で、日本には地方にも公共交通機関など「インフラストック」が充実しており、これを活用すべきとアピールした。

 JLとしては東日本大震災の直後から継続する「JAPAN PROJECT」や外国人向けウェブサイトを通した魅力の発信、JAL財団の「JALスカラシッププログラム」による知日派の育成といった事業に取り組んでいるところ。大西氏はそうした経験の中から、地元の人々が「普段見ている景色、普段飲んでいるお酒、普段食べている食事」といったものの魅力に気付きにくく、それが理由で情報発信が進んでいないことが課題と分析した。

JTB田川氏 一方、田川氏は「ツーリズムの世界の潮流と日本のインバウンドの課題に対する提言」と題してセミナーを実施。観光が「裾野の広い産業」であることや経済波及効果や雇用創出効果が大きいこと、世界と比較すると日本には大きな伸びしろがあることなど観光産業の基礎的な説明をした上で、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックが千載一遇のチャンスであると強調した。

 そして課題の一つとして航空座席を挙げ、20年に訪日外客数が4000万人に達するとして日本人出国者数が現状を維持すると年間で約6000万席が必要になると指摘。欧州市場での価格面での需要開拓効果も含めて、チャーターが有効な解決策であるとした。またクルーズについても、例えば裕福な乗船客を迎える場所が貨物用の埠頭であるなど「まだまだやらなければならないことが多い」との考えだ。

 さらに、世界の観光産業関係者の間ではテロと難民問題への対応が再重視されているといい、そうした外部の目を意識することの必要性にも言及。このほか、自治体などの観光プロモーションについて、単年度ではなく継続して取り組んでいくことがより有効とも語った。

 なお、21日の会場では両氏以外にも三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員の大西洋氏や日本観光振興協会前理事長の見並陽一氏の講演やスピーチ、DMO関連のパネルディスカッションなども実施。Google観光立国推進部長の陣内裕樹氏らが登壇したパネルディスカッションでも、旅行情報流通におけるオンライン媒体のシェア拡大を把握し、その特性やユーザーの志向を理解した上で情報発信に取り組むことが必須との意見でパネラーの考えが一致していた。