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クルーズ専門旅行会社、コロナ禍中も営業継続でチャンスを掴む―ビュート代表取締役 村田洋一氏

株式会社ビュート代表取締役 村田洋一氏

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で休止していた国内クルーズ船の運航が、10月末よりおよそ8ヶ月ぶりに再開された。2月に発生した「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染は記憶に新しいが、クルーズ専門旅行会社、株式会社ビュートの代表取締役 村田洋一氏は、来年度の予約は順調に伸びているという。壊滅的な状況を打破し、コロナ禍中にも攻めの姿勢を貫く同氏に、これまでの取り組みと今後の見通しを伺った。インタビューは11月2日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

-まずは貴社ならびにご自身のご紹介をお願いいたします

村田洋一氏(以下敬称略) 当社は2017年にクルーズ専門の旅行会社として創業し、2018年より営業を開始した。会社設立までには、中小の旅行会社の経営を勉強するために業務渡航の手配をおこなう会社に在籍した後、クルーズを専門に扱う株式会社クルーズプラネットに移り、ノウハウを学ばせてもらった。(編集部注:村田氏の詳しいプロフィールは過去のインタビューもご参照ください。)

 当社の特徴のひとつはFIT手配をメインとしている点にある。設立当初は団体旅行の手配が多かったが、徐々にシフトし、新婚旅行など日付が限られるお客様を中心に取扱いを増やしてきた。

 もうひとつの特徴は、クルーズの予約時に客室番号をお客様にお伝えする点だ。日本の旅行会社では、手配ミスをカバーする意味もあり、客室番号を案内しないことが商習慣となっているが、我々は客室も旅行の楽しみの一部と考え、海外のスタンダードを実践している。このサービスを熱烈に支持してくださっているお客様は多い。

-「ダイヤモンド・プリンセス」で発生した集団感染の影響はどのようなものだったでしょうか

村田 「ダイヤモンド・プリンセス」は2月4日に帰港したが、実はその時点では関係者も大きな危機感は持っておらず、当初は1日遅れでの出港を予定していた。ところが翌日になって状況が明らかになり、当社にもキャンセルの依頼が殺到。2月14日からの1週間で6000万円が取り消しとなった。

 お客様には船会社からの払い戻しを待たず、全額を返金した。当然あっという間にキャッシュが底をつく。この事態は当分続くだろうと判断し、すぐに資金調達をおこなった。世の中が貸し渋りになる前に調達できたのは不幸中の幸いだったが、この頃はキャッシュのやりくりが非常に苦しかった。一部の船会社からは10月末時点でも全額は戻ってきていない。

 クルーズ業界全体では、今年2月以降は外国船の売上は皆無、日本船は運航を再開したものの、パイが小さすぎて売上を補填する規模ではない。まさに失われた1年となってしまった。