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スペシャリスト・インタビュー<スイス>:フェロートラベル 澤宏太郎さん

ハイキングで新たなスイスの魅力を発見

 今から13年前、異業種から旅行業界に身を転じた澤宏太郎さん。スキーが得意だったことから、海外スキーツアーのパイオニアとして知られる旅行会社フェロートラベルに入社。カナダ、ニュージーランドのほか、スイスを含むヨーロッパでスキーガイドとして活躍しています。3年前からはハイキングツアーも担当するようになり、スイスとの付き合いも深まりました。今年、スイス・スペシャリストの認定を受けた澤さんに、スイスの魅力、スイスの新たな楽しみ方などについてお聞きします。
                           
                           
フェロートラベル 営業主任
澤宏太郎さん
2010年度(第6回)スイス・スペシャリスト認定

                           
                           
Q.スイスと関わるようになった経緯を教えてください

 大学卒業後はまったく別の業界で働いていたのですが、得意だったスキーを活かそうと、13年前にフェロートラベルに転職しました。入社後は、冬はカナダ、夏はニュージーランドに駐在して日本発のスキーツアーのガイドとして働き、その後、冬の間の駐在先がフランスになったことでスイスにも添乗で行くようになりました。ツェルマット、グリンデルワルド、サン・モリッツに現地法人があるので、フランスから添乗することもあるのです。海外駐在中心の約5年間を過ごした後、東京勤務となり、現在、企画から集客、添乗までを担っています。3年ほど前からはハイキング企画も担当するようになり、6、7月のハイキングシーズンはスイスに滞在し、パッケージツアーの添乗をしたり、個人旅行ツアーのガイドをしたりしています。

 当社にとって、スイスは集客の中核を担うデスティネーションです。年間約1500から1800人のスキーツアー客の約3分の1はツェルマットを訪れているほか、当社売上の約3割を占めるまでに成長したハイキング商品についても、その8割がスイスです。


Q.スイスの魅力とは何でしょうか

 スイスは、“行ってがっかりすることがない”デスティネーションですね。なんといっても、あらゆる観光素材がそろっています。まずは美しい景観。それから、充実した公共交通機関。当社の場合、オーダーメイドの個人旅行の取り扱いが多いのですが、交通網が整備されたスイスは旅行が作りやすい。当社のハイキングツアーには、登山までいかないレベルのものもあります。歩くのは平地か下りのみで、山頂へはロープウェーやケーブルカーを使うため、山のすみずみまで交通網が行き渡り、目的地まで荷物を送れるシステムが整備されているスイスは、さまざまな点で便利です。パッケージの添乗で訪れても、スイスに入るとほっとしますね。


Q.御社の強みは何でしょう

 かつて、海外スキーを扱う旅行会社は複数ありましたが、ほとんど淘汰されてしまいました。この不況下で当社が集客を維持できたのは、あくまでスキーおよびハイキング専門でやってきたからだと思います。当社の商品はすべて直販で、企画から集客、添乗、説明会での説明まですべてを社員が担当します。それがかえって信頼を得ているのかもしれません。ツアーの人数は多くて10人程度なので小回りもきくため、たとえば天気の悪い日ならわざわざ山頂のレストランへは行かず、ふもとの美味しいレストランに案内するといった臨機応変な対応もできます。最低3連泊という、ゆったりとした日程も評価されていると思います。


Q.仕事の楽しみとは何ですか

 旅行の仕事は直にお客様のリアクションを感じられるのが楽しいですね。とくに当社は規模も小さいため、お客様との距離が非常に近い。スキーやハイキングという趣味を通じてお客様が集まっているということもあるのでしょう。お歳暮にリンゴを送っていただいたり、お客様のホームパーティに説明会を兼ねて招待していただいたりといった交流もあります。自分のしたことがお客様の楽しみにつながるということにやりがいを感じますね。


Q.スイス・スペシャリストの認定試験を受けた経緯は

 当社では、会社としてスペシャリストの資格取得をすすめていて、社内では僕がスイス・スペシャリスト5人目です。1社の人数としてはかなり多いのではないでしょうか。スペシャリストを紹介しているスイス政府観光局のサイトから辿って当社に問い合わせをいただくこともあり、スイスに詳しい旅行会社というイメージを抱いてもらえているのではないかと思っています。夏はハイキングで忙しい時期なのですが、私も今年なんとか時間を作って受けました。暗記して答えるものではなく、時間さえあれば調べて答えることができるのですが、カルト級の設問もあってなかなか手強かったです。ただ、おかげで知識は確実に広がりましたね。


Q.スイス・スペシャリストの資格は今後どのように活かせると思われますか

 オーダーメイドのツアー企画では、こちらからもお客様にさまざまな提案をすることが求められますが、知識が増え、引き出しが増えたことは大きなメリットです。今後はガイド業務にも大いに役立つと思います。というのも、スキーツアーと違ってハイキングの場合、歩きながら話せますから、ガイドの時間が圧倒的に長い。博学で好奇心旺盛なお客様も多く、たとえばスイスという国のシステムや産業構造についての話も興味深く聞いてくれます。逆に、そういう方々と対等に話すには山の知識だけでは不十分ということもあるんですよね。認定試験は、知識を増やすためのいい勉強の機会になりました。


Q.スイスの新たな楽しみ方としておすすめは

 僕はスキー専門だったので、当初ハイキングについては、正直あまり興味がなかったんです。でも実際歩いてみて、スキーとは違った楽しみがたくさんあることがわかりました。同じようなコースを巡っても時間の流れ方がまったく違い、夏には花、秋には紅葉など、さまざまな発見がある。山の見え方が違うんですね。写真撮影も楽しい。
 
 そんなハイキングシーズンの新たな楽しみとして紹介したいのが、Eバイク(電動アシスト付き自転車)です。今秋に催行したハイキングツアーで、サン・モリッツ滞在時に1日だけサイクリングのオプションを設定したところ、お客様に大変好評でした。たとえば、サン・モリッツの山にはノルディック用のコースが整備されていて、夏はそこを自転車で走ることができるのです。徒歩に比べて行動範囲は格段に広がるし、人のいない湖や氷河の谷など、徒歩ではたどりつけない場所にもアクセスできます。

 当初お客様はそれほど乗り気ではなかったのですが、後で聞いてみると口々に面白かったと言っていて、サイクリングがいちばん楽しかったという人もいたほど。美しい景色の中、風を切って走る感覚が楽しかったのでしょう。スイスはここ数年、国としてもEバイクを推進していて、来年には貸出台数を増やすとのこと。駅やレストランなどに交換用のバッテリーを備えるなど整備も進んでいます。一度体験してみると楽しいですよ。


ありがとうございました


【参考】スイス・スペシャリストとは
 スイス政府観光局が2006年に創設した認定資格。スイスに関する幅白い知識を持ち、
バラエティ豊かな商品開発や顧客への適切なアドバイスができるスイス旅行のプロフェ
ッショナルに与えられます。試験内容は、95%以上の正解が求められる250問の四択問
題と、スイスパス8日間を利用したモデルコースの作成。資格保有者には、スイス・ス
ペシャリスト認定証、名刺貼付け用の認定シール、旅行商品パンフレットにおけるスペ
シャリストのロゴマーク使用の権利、スイス政府観光局公式ウエブサイトでの紹介、研
修旅行への優先参加などの特典が与えられます。これまで4回実施、計100人のスイス・
スペシャリストが誕生しています。