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トップインタビュー:香港政府観光局会長 ジェームス・ティエン氏

  • 2009年7月29日
旅行業界が必要とするすべてのことに手助けをしたい
行政、産業と連携し、協力して需要喚起へ


 日本香港観光交流年の一環で、香港政府観光局(HKTB)は7月1日から5日にかけて東京の六本木ヒルズで「香港ウィーク」を開催した。経済危機や新型インフルエンザの発生など旅行市場を取り巻く環境が激変するなか、香港も5月の日本人訪問者数が26.4%減、1月からの累計でも9.4%減と影響を免れていない。観光交流年の後半戦に向け、HKTBは日本市場をどう捉えているのか。HKTB会長のジェームス・ティエン氏に聞いた。



−日本香港観光交流年の進捗やご評価をお聞かせください

ジェームス・ティエン氏(以下 敬称略) 観光庁の発足後、初の観光交流年事業の相手として香港を選んでもらい、大変うれしく感じている。観光交流年自体は、経済危機と新型インフルエンザによって、期待以上の成果は得られていない。しかし、これらの要因は我々の力が及ぶものではなく、それを除けばこれまでの結果は悪いものではない。また、観光交流年のような事業は直接的な成果のみならず、中長期的な発展もめざすものであり、2010年以降もこうした活動を継続して持続的な成長を実現したい。

 これまでも2国間は、長い期間にわたって交流が盛んだった。私自身も何度も来日しており、東京だけでなくスキーをしに北海道や苗場を訪れた回数も数えられないほどだ。2国間のこうした関係を維持、発展していきたい。


−経済危機や新型インフルエンザの影響ですが、香港のインバウンド市場の現状はいかがでしょうか

ティエン インフルエンザが発生するまでの1月から4月、世界中から迎えた旅行者の数は1.5%増と好調に推移していたが、5月と6月は約10%減少した。日本も例外でなく、2ヶ月ともマイナス成長をしている。しかし、現在は影響も落ち着いてきていると考えている。先日ヨーロッパを訪れた際にも、人々がまた旅行をしはじめていることを肌で感じた。HKTBとして多くのプロモーションを展開しており、香港は他国に比べてより早く回復すると信じている。

 また、プラス推移していた4月までの動向でも、方面別では中国本土からの旅行者が15%増で、ヨーロッパやアメリカは前年を割っている。これは経済危機が主な要因で、数ヶ月で戻ってくるとは考えていない。通年でも全体の数字は前年を割り込むかもしれないが、1.5%から2%程度の減少に抑えられるのではないかと予想している。特に中国本土や東南アジアなど、短距離のデスティネーションは回復すると考えている。


−その中で日本市場をどのようにご覧になっていますか

ティエン 日本市場でもインフルエンザの打撃は甚大だった。回復に向けて、HKTB日本支局を通じて日本の旅行業界と連携をとっており、パッケージツアーの造成や需要喚起をお願いしている。現在のところ7月と8月は回復傾向を示しており、人数ベースで10%増を見込んでいる。これは、パッケージでの平均的な旅行代金が下がっていることもプラスに作用しているだろう。卑近の旅行代金は、昨年は6万円程度であったが、現在は3割ほど値下がりして4万円程度となっている。

 また、検疫体制の変化も好意的に受けとめられるのではないか。当初、新型インフルエンザに対して香港政府は、ホテルの封鎖など厳しく対応していたが、現在は航空機内で感染者の横に座っていた人や、ホテルで横の部屋に宿泊していた人なども、隔離しないように方針を変えている。旅行者はインフルエンザにかかることよりもホテル全体が隔離されることを懸念しているという調査結果もあり、この方針転換は回復に向けて効果があるだろう。特に日本や中国市場での効果が高いと考えている。

 一方、経済危機の影響は比較的小さい。需要を左右する重要な要素である為替レートも、日本市場は円が比較的強いため期待している。


−日本人訪問者数の増加に向けての施策や意気込みをお聞かせください

ティエン 今回開催した香港ウィークは日本香港観光交流年のメインイベントとして位置づけており、特に夏の旅行需要を喚起することを目的としている。需要喚起にはディスカウントも重要だが、日本香港観光交流年で用意したクーポンブックはよく使われている。

 また、10月には「香港ワイン&ダイン・フェスティバル」を開催する。これは、香港が昨年、ワインの関税を撤廃したことから、フランス産など世界中のワインを世界で一番安く飲めることを打ち出すイベントだ。

 旅行業界に向けても本局、日本支局ともに、旅行業界が必要とする事柄にはすべて手助けをしたい。我々は小さな都市だが、だからこそ意思決定と行動を迅速にできる効率的な行政が可能だ。産業とも連携を密にしており、航空、ホテル、レストラン、ブティックショップなどすべての旅行関連産業が協力して需要を喚起しようとしている。

ありがとうございました


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