スペシャリスト・インタビュー:ブルーム・アンド・グロウ 橋本亮一さん

誇りある旅のプロとして対応できる人材育成を

 パンフレットを置かず、予約制でお客様にじっくり対峙する旅サロン「ブルーム・アンド・グロウ」を経営する橋本さん。2007年にインタビューさせていただいてから2年。現在はDS認定を6講座に広げられており、当コーナーに2度目の登場をお願いしました。日々の業務では開業から6年目となり、理想的な旅のコンサルティング業務にお忙しいとか。今回は同社の現状や昨今の旅行業界を取り巻く厳しい現状をどう捉えていらっしゃるのか。じっくりと話をうかがいました。

ブルーム・アンド・グロウ
代表取締役 橋本 亮一さん

2004年度 トラベル・コーディネーター認定
2005年度(第1回)デスティネーション・スペシャリスト ニュージーランド認定
2005年度(第1回)デスティネーション・スペシャリスト チェコ・ハンガリー認定
2006年度(第2回)デスティネーション・スペシャリスト ドイツ認定
2006年度(第2回)デスティネーション・スペシャリスト 香港・マカオ認定
2007年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト イタリア・マルタ認定
2007年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト アメリカ認定



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スペシャリスト・インタビュー ブルーム・アンド・グロウ 橋本亮一さん(2007/05/15)


Q.最近のお客様の傾向に変化はありますか

 以前のインタビューでは30代、40代の女性が主流とお話しましたが、客層は少しずつ拡大しています。年齢だけでなく、旅の条件も必ずしも時間やお金に余裕のある方ばかりではないですね。例えばぎりぎりの予算でピーク時に旅をしたいという要望もあり、リクエストの内容も多岐に渡ります。

 開業時からの傾向として、お客様が口をそろえていうのは、パッケージツアーはスケジュールが忙し過ぎるということです。もちろん、シニア層を対象にした至れり尽くせりのゆったりプランは各社がラインナップしています。しかしこれらはターゲットが狭すぎて、40代や50代といったシニア手前の世代にはとっつきにくい。ゆったり過ごしたいが食事はいらないといった要望もあり、そうなると一から好みの内容をプランするFIT旅行をせざるを得なくなるわけです。


Q.旅行方面における近年の傾向はいかがですか

 当社は全世界を取り扱っていますが、半分以上はヨーロッパです。周遊旅行の大半がヨーロッパであるからで、リゾートやシティ滞在ならスケルトンでいいですからね。また、NHK文化センターをはじめ、各所で講演活動をしているのですが、この時主題となるテーマにヨーロッパが多いということもあると思います。歴史、文化、芸術いずれにおいてもテーマが奥深いので。今後は、中国やアジアにももっと注目していきたいと思っています。


Q.そもそも会社を立ち上げたきっかけは

 大手の旅行会社に長年勤めていましたが、元来の旅行好きで入社したというより、入社してから海外旅行に興味を持ちました。大手としては初の中欧地区であるチェコとハンガリーをパッケージツアー化するプロジェクトに携わったことも、今につながっています。しかし、パッケージツアーというものに取り組めば取り組むほど、旅行会社も旅行者も温室の中で観光素材を見せたような、また見たような気になっているだけというふうに感じるようになりました。旅行はもっと自らの体験そのものではないのか、という疑問です。

 実は入社前、一度だけ海外を旅したことがありました。旅というかスポーツ指導でスリランカへ行ったのですが、ここでの経験がその疑問の裏づけになっています。外国で異文化に接することの魅力、また他国の人々と交流することの意義深さを、この時痛烈に感じました。旅とは、自分の意思で自ら経験することで得られるものだと思うのです。旅行会社はその受け皿として存在し、それらを満たすツアーがあることが望ましいはず。しかし現実は、似たような商品で価格合戦をし、その結果、旅行会社自身が自立できずにいる現状に疑問を抱いたのがきっかけです。


Q.そして、現在のような旅サロンのスタイルになったのですね

 6年前、当社のようなスタイルの旅サロンは珍しかったと思います。集客はクチコミ、コンサルティングは予約制で、1組につき平均2時間をかけています。ですので、どんなに多くても1日4組が限度で、現在は自分を含む3人のスタッフでコンサルティングを担当しています。

 今、旅行会社のカウンターに出向いても、お客様はがっかりして帰ることが多いのではないでしょうか。航空券やホテルの手配だけならインターネットで十分なわけで、そこにプラスアルファがなければ意味がありません。この現状を反面教師にすれば、おのずと当社のコンサルティングのあり方も見えてきます。


Q.旅行業界の悪循環を打破する鍵は何だと思いますか

 不況や新型インフルエンザで、旅行会社の安売りは加熱し、特に関西ではヒートアップしています。どんなに厳しくても安売りに走っていては何も解決しません。現状を変えるために早急に取り組めることがあるとすれば、カウンタースタッフの育成だと思います。現在のカウンター担当者の多くは派遣社員です。派遣だから悪いというわけでなく、旅のプロといえる専門家がいないのが問題なのです。

 コンサルティング能力や業務知識を提供する付加価値があって初めて、カウンターにスタッフがいる意味が生まれます。例えばホテルを選ぶだけだとしても、パンフレットに掲載されているホテルはどれも素敵に見えるでしょう。しかし、向きあっているお客様の要望にあうホテルはどれなのか、ヒューマンタッチなコンサルティングをすることで、旅はより豊かに彩ることができるのです。


Q.意識の高いスタッフ育成にDSは役立つと思われますか

 6種類のDSを取得していますが、これを持っていることがコンサルティング業務の役に立っているとは実は思っていません。DSはそのデスティネーションに対して興味をもつ入口です。旅のプロとなるための自己啓発としてはいい制度だと思うので、人材を育てるきっかけとしてもっと有効に活用したらいいと思います。

 ただ、DS制度自体は検証の時にきているように思います。取得後にどう役立てていくのか、改善の余地があると思うからです。前にもお話しましたが、観光局やJATAと認定者の連携を密にし、情報交換できる企画を立てるとか、認定者に対するインセンティブ的なメリットを付加するといったアイデアなどがあると思います。


Q.今後の業務で、思い描いていることはありますか

 おかげさまで、1人1人のお客様に自信をもっておすすめできるプランを提供できているという誇りがあり、スタッフとともにいきいきと仕事をしています。今後はプロのコンサルタントを養成していくという方向もあると思っていますが、とりあえずは個性や知識をもった旅行業に携わる方々とのゆるやかなネットワークを強化し、コンサル型旅行業のポジションを高めていきたいと考えています。


ありがとうございました



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