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スペシャリスト・インタビュー 読売旅行 羽田利久さん

“遊び上手”が旅に人を惹きつける

「あなたの街から旅にでる」をコンセプトに、全国に102営業所を設ける読売旅行。地域に密着し、企画から宣伝、受付、添乗まで、各営業所が1つの会社のように旅行業の全ての業務をすることで、お客様との近い距離で旅行を提供することを強みとしています。羽田さんも入社後6年間は金沢の営業所に勤務され、徹底的に現場のお仕事を吸収されたとか。本社勤務では、新規事業や商品開発・管理を経て、広報・市場調査に携わる豊富な経験を踏まえ、お話を伺いました。

株式会社読売旅行 経営戦略室 広報・市場調査部 主任 羽田利久さん
 2006年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト インドシナ認定


Q.DSを取得しようと思ったきっかけは

経営戦略室という立場から、この資格を社内の教育制度とする場合、どのような内容なのか知る必要があり、まずは自分で受講してみました。また、JATAが一丸となって普及していこうという中で、少しでもその一助となればとも思いました。

Q.感想を教えてください

お客様から求められるのは観光地の情報だけではないので、歴史や政治など幅広い範囲から出題されている点が良いと思いました。ただ、講座の資料として届いたのが、一般消費者向けの薄いリーフレットのみで、地域によって差があるのかもしれませんが、これには正直がっかりしましたね。結局、教科書として対象の4ヶ国のガイドブックを自分で購入し、補足として関連サイトを閲覧して勉強しました。また、DSサイトの閲覧回数が決まっているので、プリントアウトして繰り返し利用しました。通勤途中や昼休みにも確認できる利点もありますが、何度も触れる方が良いので、ドリルについては回数制限を廃止したが良いと思います。

Q.DSはどのように活用できると思いますか

認定者は当該地域について、業務の必然性はもちろん、何らかの思い入れがあることでしょう。そうすると、お客様との橋渡し役となるミニ観光大使のような感覚で捉えることができると思います。観光局からは積極的な最新情報の提供や視察旅行の実施があるとうれしいですね。渡航歴がない人のための優待旅行があってもよいかもしれません。それを目的に申し込む人がいても、きっかけとしてその国のファンになるならよいのではないでしょうか。旅行会社のスタッフにとって実際に旅行して現地を知ることは、とても大切なことのはずです。

私がこの地域の受講を選択したのも、個人旅行で現地の歴史や文化、現地の活況さを目の当たりにし、これからますます注目される地域だと興味を持ち、掘り下げて知識を身に付けたいと思ったからです。特にハノイは食べ物も美味しくカフェもおしゃれで、女性にも楽しい場所。それだけでなく、世界全体やアジアの歴史を感じさせられることもありました。興味深いデスティネーションだと思います。

Q.中堅社員として、若手の方々を直接指導する立場だと思いますが、アドバイスはありますか

私は旅行会社のスタッフは、良い意味での公私混同をして、もっと遊ぶべきだと思います。機会を見つけては添乗や出張、プライベート問わず、出かけるべきです。仕事が忙しくて旅ができないのは本末転倒ではないでしょうか。旅行は楽しむものですから、お客様は“遊び上手な人”に旅行を任せたいと思うはずです。足を運んでいただいたお客様には「相談に来てよかった」と思っていただける努力が必要。さらに「次もあの人にお話を聞こう」と思われたら、成功ですよね。

私は友人と旅行の話をすると、「知らないことをたくさん知っている」といわれます。旅行会社のスタッフですから当然ですが、それでも業界全体がそのことにもっと自信を持った方が良いと思いますよ。

Q.今後の目標はありますか

「いいものを人に伝えたい」と思うのは旅行業の基本。お客様に喜んでいただいて当然ですが、私は最近、受け入れ側がどう思っているかも気になっています。

金沢営業所に勤めていた頃、神戸への食べ歩き日帰りツアーを企画したことがあります。昼食に神戸牛の鉄板焼きの食べ放題、UCC博物館でうんちくを聞きながらのコーヒーブレイク、北野工房のまちの「アンテノール」で同店限定のパンプディングを食べ、夜景を見る…というツアーで、夏と秋のコースで2000人を送客し、かなりの好評を得ました。

その年の12月ごろ、突然アンテノールの金沢店の方が来店され、同ツアーに参加した人が買物に来るようになったとおっしゃっていただいたんです。自分の仕事が影響したと知り、うれしく思いました。最近では旅行による経済効果が注目されていますが、それに近いことを国内外問わず、していきたいと思っています。結局、自分は現場が好きなのかもしれません。というより、旅行業界の人は基本的に、現場の仕事が好きなんだと思います。

ありがとうございました。


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