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スペシャリスト・インタビュー 企業組合シニア旅行カウンセラーズ 亀坂興紀さん

もっと海外経験を。旅行業の楽しさ見つけ、真の「スペシャリスト」に

亀坂さんは大手旅行会社で長年勤務され、退職後もシニア旅行カウンセラーズでご活躍されている、旅行業界の大先輩。支店を中心に、国内・海外問わずツアーの企画や販売、団体セールスなど一通りの業務を経験されたそうです。さらに現在は旅行業のほか、大学の講師として若い世代に旅行業の姿を伝える一面も。業界歴42年のご経験から見た現在の旅行業界について、語っていただきました。

企業組合シニア旅行カウンセラーズ シニア・トラベル・カウンセラー 亀坂興紀さん
 2006年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト 韓国認定


Q.DSを受講した感想を教えてください

初めての韓国渡航は1971年11月、添乗業務でのことでした。以来、韓国が好きになり、韓国の7割くらいの地域を訪れていると思います。養成講座のドリルはテーマごとに出題されて知識を整理するのに役立ちました。また、関連情報として韓国観光公社のホームページの隅々の情報まで誘導があり、分かりやすい仕組みで良かったと思います。

ただ、スペシャリストに求められるものは、旅行の案内や手配、企画、ガイドや添乗だけでなく、該当方面を旅する面白さと奥の深さを伝えることだと思います。そのためには表面的な情報だけでなく、現地の習慣、現地の言葉なども必要だと思うのですが、その幅が少なかったように感じました。また、認定試験の問題のほとんどがドリルと同じでしたので少々、拍子抜けしました。合格率が90%で「スペシャリスト」と言えるでしょうか。ただ、ヨーロッパやアジアなどの方面でDSを複数取得する方もいらっしゃるようで、そういう使い方は有効かも知れません。

Q.韓国旅行の魅力を教えてください

韓国は日本と同じく四季がありますので、異なる季節と食事のバリエーションを変えて案内すれば、何回訪れても楽しめますね。日本人の韓国訪問者数は急増しましたが、一過性のショッピングやロケ地巡りが多く、そのうちどれほどの人が韓国を楽しむ旅行をしているのでしょうか。うまくアドバイスできれば、流行が過ぎた後もリピーターとなる人も多いはずです。

例えば、世界遺産に登録された古都・慶州は、秋は紅葉、春は桜の名所。慶州駅に到着したとたん、目に飛び込んでくる桜の風景は素晴らしいですよ。ソウル周辺では新緑のころの漢江(ハンガン)河岸の柳並木も見もの。韓国のアルプス・雪嶽山(ソラクサン)は秋の紅葉もさることながら、マツタケの味覚も楽しめます。

Q.亀坂さんならではの企画のポイントは

食事について言えば、日本で知られている料理とまだ知られていないものとを、旅行中に味わってもらうようにします。例えば、ある日の朝食は韓国お粥、昼食はビビンパップ、夕食はタレ浸けカルビ。別の日は朝食に牛のスープ「ソロンタン」、昼食に刺身の入ったビビンパップ「フェドパップ」、夕食に牛塩カルビ、という風ですが、結果としてとても好評です。日本でも味わえる料理でも本場の味を確認でき、新しい味も知ることができたと感じていただける様ですね。

それから、ホテルのロケーションもポイントでしょう。予算のこともあると思いますが、安くても立地は考慮して手配します。立地により、行動時間がずいぶんと変わるからです。お客様の年齢や体調、旅行目的を伺い、便利な場所のホテルを選ぶようにしています。

Q.長年、旅行業界でご活躍されていますが、何か変化がありますか

旅行商品そのものが違います。以前は添乗員付きの“中身のあるツアー”がほとんど。韓国でもソウルオリンピックの前までは、3泊4日で10万円位の商品でしたし、利益率も高かった。でも今は一部の商品以外、ほとんどがスケルトン型。本社の企画部門が作った商品を販売するだけなので、作り手も販売店も面白くないですよね。

ただ、今でも中身を入れられると思うのです。オプショナルツアーを利用するのですが、ただ手配するだけでなく、お客様の要望に合ったものを提案し、喜んでいただく。そこに「スペシャリスト」が活きてくると思います。昔は情報収集に時間がかかりましたから、アレンジや手配のしやすさは、今の方が便利で選択肢が豊富かもしれません。

Q.今の旅行業界に対して思うことがあれば教えてください

旅行業界は希望就職先の上位にランクされますが、実際の応募者数は減少傾向のようです。今の若い世代には旅行業界が魅力的に見えないのでしょう。入社後の離職率も高い。その理由はすべて現場を見ればわかることで、今のツアーは利益率が低いから数を売らなくちゃいけない。営業時間を販売に注力すると処理業務で残業となったり、本来、目指しているような仕事になかなか到達できないため、やる気がなくなってしまう。もったいないです。

私が長年、この業界でやってこられたのも、自分の好きなことだからに尽きると思います。自分が企画した商品を販売し、お客様の反応を直に感じることがやりがいになった。数を売って営業力を褒められるのとは違う、旅行業界人としての喜びがあると思うのです。

Q.それでは、アドバイスをお願いします。

私は企業側が、若手にもっとクリエイティブなことをさせる工夫が必要かと思います。その一つが添乗。今は派遣や専任制となって、添乗の機会が少なくなっていますが、添乗してお客様と一緒に行動することで見えてくるものがいっぱいある。旅行業の本質に触れ、成長するチャンスをもっと与えてやってほしいと思います。

一方で、若い人には「諦めるのが早すぎる」と言いたい。辛くても今が我慢の時と思って、しつこく頑張って欲しいです。業務と並行して知識や経験を高めることは不可能ではないはず。添乗に行けないなら休暇に自己投資のつもりでツアーに参加し、現場を体験すべきでしょう。そこで見たことがステップアップのきっかけになります。その姿勢が上司に伝わることで、自分の立場を作ることができると思いますよ。

Q.今後の目標はありますか

まだ出かけていない地域がありますので、チャンスがあったら旅行に出かけたい。例えば、ベトナムを北から南まで、ゆっくり巡るのもいいですね。それから韓国に何十回行ったと言っても、まだ7割程度しか見ていませんし、もう一度行きたいところもありますから、これからも旅行をできる限り、続けたいですね。

ありがとうございました。


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