スペシャリスト・インタビュー 株式会社ジャルパック 大木光馬さん

得意方面を持つ社員は会社の大きな財産

デスティネーション・スペシャリスト(DS)は、店頭販売や企画など旅行実務の担当者以外にも、幅広い方々が受講されているようです。今回ご登場いただく大木光馬さんも、その一人。現在は人事グループで社員研修や教育などもご担当されていらっしゃいます。いわば研修制度のプロの目から見たDS養成講座は、どのように映ったのでしょうか。率直なご意見を伺いました。

株式会社ジャルパック 企画総務部 人事グループ アシスタントマネージャー 大木光馬さん
 2006年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト イギリス・アイルランド認定


Q.業界での簡単な略歴を教えてください

私が入社した当時、弊社では新入社員のほとんどが、入社後2年くらいは添乗業務を担当しました。私もヨーロッパを中心にアメリカやオセアニアなど、月に2回程度は添乗に出ていました。ヨーロッパでの添乗の際は、大学で勉強した西洋美術史や中世史などの話を織り交ぜて案内し、喜ばれたのはうれしかったですね。その後、ヨーロッパ方面の企画グループで、主にパッケージツアー用の仕入を担当。その2年後にはロンドン駐在となり日本発ツアーの手配を担当。02年5月に帰国してからは人事グループの所属となっています。

Q.なぜ、DSを取得しようと思われたのですか

2つの動機があります。一つは現在、JATAさんも協力されてDSを普及させようという中で、海外旅行専門の弊社でも協力していきたいと考えたからです。弊社は現在、DSを個人の能力開発ツールの一つと位置づけており、受講費用等の補助をしています。とりまとめ等も人事グループで担当しますから、どのような制度なのか、担当者自身でも体験した方が良いと思いました。

もう一つの理由は、ロンドン駐在時代に実際に生活してイギリスが好きになったので、駐在中に知り得たさまざまな情報を、DSというオフィシャルな形で整理しながら、体系的に学びたいと思ったからです。現地に関する断片的な情報や感覚が残っていますが、養成講座で正しい情報を習得すれば、自信にもなるとも思いました。

Q.受講した感想を教えてください

想像していた以上に詳細な情報や知識が求められると思いました。交通インフラや文化などの大枠の概要は分かっても、道路の名前やホテルの正式名称をスペルも正しく書こうとすると、すぐに出てこないこともあります。正直なところ、最初は暗記することに意識を置いた為、イギリス代表的な「庭園」についてはカテゴリーや名前など勉強することに苦労しました。それから、私が帰国した後の情報も多数あり、アップデートされた内容だということも分かりました。

Q.研修、教育担当者から見て、DSに対する要望はありますか

せっかくのEラーニングなので、文字だけでなくビジュアル化した情報や音をに触れる機会があっても良かったですね。どうしても読む、見るということに集中しました。受講すると各エリアのマニュアルやガイドブック、そしてテーマ別の冊子が送付され、講座で触れられている内容について情報として「マニュアルを見てください」と誘導してくれます。どこに何が書いてあるのか示されるので、通勤中でも学べるメリットもあります。ただ、受講者の中には、「修了テストだけではなく、受講生だけが見られる情報を期待していた」、という要望を寄せた意欲の高い人もいました。

Q.その他、受講した社員の方々の様子はどうでしたか

06年度の養成講座は夏にスタートしましたが、実際は取りかかりが遅くて試験前に集中して学習した社員が多かったようです。これはモチベーションの問題もあるかもしれませんが、仕事の繁忙期は時間的な問題で目の前の仕事を優先させてしまいがちです。

DSは長期間にわたって自習することになりますので、例えば夏場などに受講者を対象にしたセミナーを開催したり、少し形式を変えた学習の機会を提供するのはどうでしょうか。学習にバリエーションが広がり、受講者同士や観光局の方々と話をすることで、触発されることも多いと思います。

Q.御社ではどのような業務の担当者が受講されましたか

主に予約、企画と手配担当者が中心でした。だいたい入社4年目頃から30代前半くらいの社員です。Eビジネスに携わる社員も、インターネットを利用する点で興味を持ち、受講していました。

私は少なくとも1人一つくらいはデスティネーションに強みを持つのが理想的だと思います。これによって自分の勉強したエリアについて関心が高まる、そして更に旅行業務が好きになったり、サービスの質を高められれば、会社にとって大きな財産になると思います。弊社には現在まで30人の認定者がいますので、人事として社内に広報する方法を考え、浸透させたいと思っています。

Q.人事ご担当者の目から、今後の旅行業界には何が求められると思いますか

ビジネスでは情報や知識、技術といったことが重要視されますが、旅行に関しては同時に感性とか想像力が大切になると感じています。私たちは旅行を通して、夢や感動を提供しているのですが、旅を支える私たちの日々の仕事が、数字や文字しか見えない無味乾燥なものだったら何だか寂しいですね。パンフレットや写真の先にあるものを想像する力、例えば波の音や砂浜を踏む足の感覚など、実際に旅したからこそ分かる感覚をたくさん持って、それを伝える気持ちが大切なように感じています。何より旅行に携わる人たちはもっと自分で旅行に出ることが大切かも知れません。

また、弊社の研修では、自分に何かが出来ると思えたり、自分が好きになったり、何かが出きると思えるような人間力を高める内容を強化しています。自分の担当している業務の重要性や役割に気付き、自分の仕事に誇りや自信を持てるような機会を提供していきたいと思っています。

ありがとうございました。


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