新しい“スパ”コンセプトで注目のレッドロック・カジノ・リゾート&スパ

  • 2008年6月3日
 鮮やかな赤茶色の岩肌が輝くレッドロック・キャニオンは、ラスベガスの中心から15キロと静かで雄大な自然が広がっている。その入り口に2年前にオープンしたのが、レッドロック・カジノ・リゾート&スパ。オープン直後から大きな話題を呼び、旅行雑誌「コンデネスト」の「世界のトップ・ニュー・ホテル138撰」の一つに選ばれた。数多くのアイディアに満ちたこのホテルで、最も注目されているのが「アドベンチャー・スパ」。従来のラスベガスのスパの常識を打ち破る新たなコンセプトの提案として注目したい。アドベンチャー・スパに参加し、その可能性を探った。(取材:宮田麻未 写真:神尾明朗)


AAAの4ツ星リゾート

 リゾートは周囲の砂漠に溶け込むかのようなシンプルなデザインの外観だが、ホテルの入り口は鮮やかなワインレッドのガラスドア。ラスベガスの派手なロビーとは違い、ドアを開けてみると、ポストモダンな上品なデザインのソファーがならび、フロントデスクの応対は迅速だ。ホテルに入るとすぐにカジノになっていたり、人の流れで騒がしかったりするラスベガス中心街の「普通の」ホテルとは様子が違う。宿泊客は高級感のあるゆったりした雰囲気を味わうことができる。

 レッドロック・リゾートは、AAA(アメリカ自動車協会)の4ツ星の認定を受け、スタンダードルームも高級ホテルらしいインテリアで、広めの設計。上質な家具、斬新なデザインで、しかも落ち着きが感じられる。スタンダードルームにも「マティーニバー」が用意され、最高級ホテルのようなきめ細かな演出も感じさせる。

 ハイローラーを迎えるスイートルームには、きらびやかさはよりも、大きな窓の外に広がるレッドロック・キャニオンの大自然がドラマチックな雰囲気を盛り上げている。一方、客室にプライベートのスパ・トリートメント室が併設され、今までにない新たな贅沢さや細かい配慮は見逃せないところ。客室数は816室で、ラスベガスとしては規模の小さいホテルといえるだろうが、広々としたプール、設備の整ったスパ、高級でありながら料金はリーズナブルなレストランと、その付属施設の充実度は注目に値する。


スパでウォーキング、新しいコンセプトに注目

 ホテル内のスパには、エクササイズルームやウエイトルームなどが併設されていることが多いが、その「フィットネスルーム」を、ホテルのすぐ外に広がるレッドロック・キャニオンの大自然の中に広げていこうと取り組んでいるのが「アドベンチャー・スパ」で、まったく新鮮なアプローチを打ち出している。このアドベンチャー・スパは、地元のテレビ番組やラジオ番組で、アウトドアやネーチャー系の人気トークショーを担当していたデビット・バート氏をディレクターに迎え、軽いハイキングから、レッドロックの岩壁を登るロッククライミング、カヤック、乗馬、サイクリングやマウンテンバイクなどのアウトドア・プログラムが組まれている。激しいスポーツというより、本来の贅沢なスパのコンセプトに沿った、心身の癒しをめざすものだ。

 今回はレッドロック・キャニオンとスプリング・マウンテン・ランチの2つの公園を訪れ、周辺のウォーキングをバート氏のガイドで体験してみた。ラスベガス・ストリップから車で30分ほどで到着できる場所とは思えない、おおらかな自然の豊かさに、心がゆったりとほぐされてくるような気がする。ハイデザートの乾いた風が心地良い。これこそ、ほんとうの「癒しのスパ体験」だ。

 バート氏はテレビやラジオのトークショーで鍛えた、わかりやすい説明と深い知識で参加者の興味をぐいぐいと引きつけてくれる。レッドロック・キャニオンや周辺の砂漠地帯の地理、驚くほどカラフルな砂漠の野草、そして、2000年以上の歴史の跡をたどることができる先住民の遺跡、そして、砂漠にわき出る美しい泉など、良いガイドのついたウォーキングの楽しさを十分に味わうことができた。


高級志向のトレンドと「ゆったり」気分を併せ持つ

 2005年にウィン・ラスベガス・ホテルがオープンし、ショッピング・モールやアトラクション中心ではなく、高級感のあるホテルとカジノの組み合わせという「本来のラスベガス」への回帰を思わせるホテルのオープンが続いている。このレッドロック・リゾートもそのトレンドの一つだろう。しかし、最高級ホテルにありがちな堅苦しさは一切なく、サービスはフレンドリーでしかもキビキビしている。ストリップから離れ、ツアーに利用することはアクセス面から難しいかもしれないが、リピーター向けの個人旅行商品の素材としては、お得感、「ひと味違う」ラスベガス、そして大自然の入り口を切り口にお勧めできるだろう。