周遊のポイント

「途中」のおもしろさも魅力の一つ

ウィスラーマウンテニア号からの海岸の眺め
ウィスラーマウンテニア号からの海岸の眺め
ビクトリア/ナナイモの間にあるイングリッシュ・サイダーの醸造所。試飲とともにオーガニック料理も食べられる
ビクトリア/ナナイモの間にあるイングリッシュ・サイダーの醸造所。試飲とともにオーガニック料理も食べられる
 バンクーバー/ビクトリア/ウィスラー周遊では、その途中にある町や文化の素材も、ツアーに組み込むべき魅力的な要素となる。

 例えば、ビクトリアからウィスラーへの移動は、まずビクトリアから島内を北上してナナイモへ行き、そこからフェリーに乗る。ビクトリア/ナナイモ間には、カウチン・セーターで知られる、カウチン族など先住民の文化に触れるスポットが多い。また、ワイナリーやグルメ向きのチーズ、ハーブ園などもあり、ゆっくり半日以上かけて移動するのが理想的。19世紀のサンフランシスコを彷彿させると言われるほど、ビクトリア王朝様式の邸宅が残されているレディ・スミス村も必見だ。

 ナナイモから本土へ渡るフェリーからは、フィヨルドの海岸線を眺めることができるし、頂上付近に氷河が輝く沿岸部山岳地帯の山並みも感動的。ホーシュー・ベイからウィスラーへ向かう道の途中には、ロッキー山脈と比べても見劣りしないほどの氷河が輝くタンタラス連山や、落差が335メートルもあるシャノン滝。秋から冬にかけて数千羽の白頭鷲が集まると言われるブラッケンデールなど、圧倒されるような大自然のパワーを感じさせる見どころが多い。周遊ルートでこの部分だけが同じところを往復することになるが、往路はバス、復路はウィスラーマウンテニア号を利用することによって、変化をつけることができる。

 このウィスラーマウンテニア号は、日本でも人気の高いロッキーマウンテニア号の姉妹列車。3時間ほどの行程ではウィスラーの山岳地帯から北米最南端のフィヨルドの海岸線を通り、ゆっくりとバンクーバーの高層ビル群に近づいて行き、車窓からは西海岸の魅力が凝縮されたと言えるような、変化に富んだ眺めが見られる。車両はドームタイプの展望車両を使うグレーシャードームと、クラシックな雰囲気のコーストクラシックの2つに分かれ、グレーシャードームではバンクーバー発の便で朝食、ウィスラー発の便ではアフタヌーンティーのサービスがある。どちらも飛行機のビジネスクラスを思わせる贅沢なもので、量もたっぷり。ワインやビールなども無料で提供される。一車両に3人の担当者が乗り込むなど、鉄道の黄金時代を再現したようなエレガントな旅を体験できる。もう一つの特徴は丁寧なガイド。各車両の担当者は車窓から見える風景、野生動物、歴史や地理などについて詳しい知識を持っており、軽妙な口調でガイドをしていく。

 このように切り口を変えることで、「カナダ西海岸3都市を巡る旅」は、リピーターや長期旅行の需要を掘り起こす素材としても使いやすい。BC州観光局をはじめ、ビクトリア観光局、ウィスラー観光局、バンクーバー観光局も、共同で記念品のピンズセットなどを制作するなど、キャンペーンに積極的に協力しあっている。旅行業界の関係者、とりわけツアーの企画担当者が新しい視点で、この周遊ルートを見ることにより、カナダ西海岸の旅に活気が加わることを期待したい。

修学旅行にも理想的なルートは「学習テーマ都市計画」
シェマイナスの壁絵
シェマイナスの壁絵
  この周遊ルートは修学旅行にもお勧め。ブリティッシュ・コロンビア州観光局では「都市計画」という視点で、生徒たちに自主的なリサーチ学習を促す訪問を勧めている。昨年、英国のリサーチ専門会社の調査で「世界で最も暮らしやすい都市」に認定されたバンクーバー市は1860年に誕生したが、人口が2000人に満たないうちから、ダウンタウンの一角に広大な公園用地(現在のスタンレー公園)を確保し、自然との調和を都市計画の基本にしている。市の中心部には高速道路を建設しないという方針や、1986年に開催した交通万博の跡地の利用、ウォーターフロントの再開発など日本が学ぶべき要素が多く、生徒たちの学習意欲を引き出すだろう。

 一方、ビクトリアはカナダ人にとって「リタイアしたら住みたい町」として知られており、バリアフリーが都市計画の大きな柱となっている。また、オールドタウンと呼ばれる市役所の周辺は、カナダで最も歴史の古いチャイナタウンをはじめ、19世紀から20世紀初頭の街並みがそのまま残されている。ここでは英国が最も繁栄していたビクトリア王朝時代の「都市」の考え方を、実際に町を歩きながら体験学習することができる。さらに州議事堂では、日本にはない「州都」という町のありかたや行政の仕組みも学ぶことができるだろう。ビクトリアからウィスラーの間には途中、建物の壁に絵を描くことで町起こしを成功させたシェマイナスにも立ち寄りたい。

 ウィスラーでは、2010年の冬季オリンピックに向けてインフラの整備やホテルの改装などが続いているが、こうした工事が環境におよぼす影響について、細心の配慮がなされている。ウィスラーは環境保護と経済的な成長のバランスを保つ「サスティナブル・リゾート」の建設を目指しており、冬季オリンピックもその一環として捉えているのだ。「リゾート開発」に対するユニークな姿勢を、様々なアクティビティに参加しながら学べるのがポイントだ。

周遊ルートに便利なエア・カナダ
バンクーバー/ビクトリアを結ぶエア・カナダのJAZZ
バンクーバー/ビクトリアを結ぶエア・カナダのJAZZ
  エア・カナダは成田国際空港と関西国際空港から、バンクーバーへの直行便を毎日運航。バンクーバー/ビクトリアの便はほぼ1時間ごとの運航なので、周遊ルートの乗り継ぎに便利だ。成田と関空から別々に出発し、バンクーバーで合流してツアーを組む場合も、到着時間は30分ほどの差なので参加者を待たせることなく集合することができる。

  日本から直接ビクトリアへ乗り継ぐ場合、いったんバンクーバーで入国手続きを行い、荷物をピックアップして乗り継ぎカウンターへ移動することになる。ただ、エア・カナダの乗り継ぎカウンターは到着ロビーの手前にあるので、日本で乗継便の座席がアサインされていれば、荷物をベルトに乗せるだけで済む。北米の空港での出入国手続きやセキュリティは煩雑で厳しいものになっているが、バンクーバーでは安全性を重視しながらも、穏やかでスムーズだ。

 また国際線でのeチケットの利用の場面も、エア・カナダの細かい気配りが感じられる。バンクーバーでは日本便のチェックインが行われている間は、常時2から3名の係員が待機し、端末の使い方の説明などの配慮がある。