
「花の旅」は夏こそ醍醐味あり
バンクーバーとビクトリアは、ラバーナムやシャクナゲなど春の「花の旅」のデスティネーションとして人気がある。ショルダーシーズンの春の旅は、ホテル料金や航空座席の供給量などの面でもメリットが大きい。しかし、町中が花であふれるのはやはり夏だ。
例えばビクトリアの名物、家々を飾るハンギング・フラワーバスケットが登場するのは夏になってから。夏は町中が花で埋め尽くされると言っても大げさではないほど。ここの住民はガーデニングに熱心な人が多いので、高級住宅街でのプライベート・ガーデン訪問なども日程に組み込みたい。ロイヤル・ロード大学構内のハットレー公園のように、伝統的なイングリッシュ・ガーデンのある場所で、ガーデニングの講習会や押し花のワークショップなど、体験型のアクティビティを組み込むことも可能だ。 また、バンクーバーではバン・ドゥーセン植物園やクイーン・エリザベス公園の花壇が華麗な夏の花で彩られ、スタンレー公園やブリティッシュ・コロンビア大学のバラ園も見事だ。住宅街の緑地帯、ダウンタウンの直ぐ近くにも温帯雨林の森が広がっているなど、カナダ西部最大の都市でありながら自然と調和された街づくりも印象に残るだろう。 そしてウィスラーでは7月、8月、高山植物のお花畑がピークを迎える。温帯雨林の森をネイチャーガイドと一緒に散策したり、ウィスラー・マウンテンの頂上付近まで行けるリフト「ピーク・アドベンチャー」で、山頂付近の高山植物を楽しみながら、氷河が輝く沿岸部の山岳地帯の景観を360度のパノラマで堪能することができる。なお、ピーク・アドベンチャーは今年オープンした夏期限定のリフトで、まだツアー商品で利用したものはない新素材だ。 夏は日照時間が長く旅行しやすい上に、カナダ西海岸では気温が30度を超えることが珍しく、湿気も少ない爽やかな気候だ。カナダ人の間で避暑地として利用されるほど過ごしやすいことも、花の旅を好む世代にはうれしい訴求ポイントといえるだろう。 |
大人の女性の休暇、「買物」「癒し」「グルメ」に新スポット
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サウス・グランビルのカフェ |
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ウィスラーの高級レストラン「アレクシーズ」 |
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ベアフット・ビストロのワインセラーでシャンペンを試飲 |
例えばバンクーバーでのショッピングは、ダウンタウンのロブソン・ストリートやアルバーニ通り周辺に限られていたが、メイン・ストリートやサウス・グランビルなどを紹介することで、新しいショッピングが体験できる。また、今までとは違う客層も狙えるだろう。
バンクーバーのメイン・ストリートは、ダウンタウンから車で10分ほど。ここ数年、地価の高いダウンタウンでの新店舗やレストランのオープンが難しくなったため、メイン・ストリートへの進出が増加。もともとアンティークショップが多いことで知られていたが、これに関連してビンテージファッションの店が続々オープンし、現在はカナダで最も人気のある若手デザイナーのブティックや、ヨーロッパやアメリカのトレンドに敏感な品揃えの店がオープンしている。
最高級レストランで腕を振るったシェフが開いた小さなビストロや行列のできる手作りパンの店、近所のアーティストたちの作品を展示するギャラリーを兼ねたカフェなど、街歩きが楽しくなる店も揃う。ブランドにこだわらず、自分らしさを表現するファッションを探す女性には、とても魅力的な場所だ。
また、カナダ屈指の高級住宅街の「御用達」ストリートとして発展してきたサウス・グランビルは、アートギャラリーからオーガニック食品を扱う高級スーパーマーケット、インテリアやキッチン小物が並ぶお洒落な店まで、中高年をターゲットにした高級店が並んでいる。エドワード・チャップマンなど、英国嗜好の高級婦人服店などもあり、ゆったりとショッピングを楽しみたい女性にアピールできるだろう。
ビクトリアではオールドタウンの周辺にユニークなファッションやインテリアの店が並んでいるし、ウィスラーでは再開発が進むクリークサイドの新しいショッピング・エリアにも注目。カナダの西海岸には天然素材を使った品ばかりを扱う店や、ヒーリンググッズ、ハーブの専門店なども多く、「癒し」を求める層に向けてもショッピングを紹介することが可能だ。この3つのエリアには癒し系のスパも多く、「大人の女性の休暇」という趣旨の企画も立てやすい。
さらにウィスラーでは、ビル・ゲイツやブラッド・ピットなどの有名人に絶賛されたベアフット・ビストロをはじめ、世界的なレベルで評価される高級レストランをリゾートらしい気軽な雰囲気で楽しむことができる。ビクトリアでは小さな醸造所のあるパブやレストランで地ビールのおいしさを堪能できるし、郊外に点在するワイナリーではワインに合った料理を紹介してもらいながら試飲することも可能だ。バンクーバーでは新鮮な魚介類や地元の食材の旨味が十分に引き出された「パシフィック・ノースウエスト料理」を出すレストランなど、女性の旅に欠かせないグルメも揃っている。
アウトドア・アクティビティで各都市の違い
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大自然でマウンテンバイク・ツアー |
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バンクーバー郊外の温帯雨林を散策するエコツアー |
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海面で跳ねたシャチ |
ビクトリアではホエールウォッチングがお勧め。ダウンタウンから出航する数時間のツアーで本格的な体験が可能だ。今回のファムツアーに参加した旅行会社の企画担当者のうち、数人が「花やアフタヌーンティーというイメージの強いビクトリアで、ホエールウォッチングのようなアクティブな体験ができるとは」と驚きの声を上げるくらい。旅行者にとっても新鮮な体験になるに違いない。
実はビクトリアの周辺にはシャチの群れが定住しており、沖合に出れば回遊するシャチの群れやコククジラ、ザトウクジラなどに遭遇するチャンスがある。また、アザラシなどの海洋動物や海鳥の観察も手軽にできる。このほかビクトリアでは、ギャロッピング・グースという愛称で親しまれた鉄道の廃線跡を利用したサイクリングルートが整備されており、ハイキング・トレイルもたくさんある。優雅なイメージのあるビクトリアで、このような意外性のあるアクティビティを紹介するのもひとつの手だ。
バンクーバーでも多様なアクティビティが体験できる。北米大陸最南端のフィヨルドでカヤックに挑戦することも可能だし、ダウンタウンの一角にあるスタンレー公園の周囲10キロあまりのサイクリングルートも人気だ。バンクーバーの郊外には、バードウォッチングで世界的に有名な野鳥保護区があり、町の北側にそびえる山々ではハイキングを楽しめる。
ウィスラーは氷河を利用した夏スキーからゴルフ、ラフティングでの急流下りや乗馬など、さまざまなアクティビティが整備されている。なかでも、ワイヤーに吊されるようにして谷から谷へ渡りながら、周囲の自然環境や野生動物などについて学ぶジップトレックなどのエコツアーや、ワールドカップ・レベルの選手たちがトレーニングにやって来るというマウンテンバイクに注目したい。マウンテンバイクは初心者向けのトレーニングを兼ねたガイド付きツアーもあり、安全にも十分注意しながらスリルを味わうことが可能だ。ファムツアー参加者のほとんどは本格的なマウンテンバイクは初めてだが、大半の人が「気持ちの良い汗をかけました。ちょっとはまりそう!」と笑顔を見せたのが印象的な光景だ。