市場動向

「MICEとは?」⑪「MICEを計画する~準備と運営」


MICE  通常運営と言うと開催期間の初日から終日までと思いがちですが、実は開催期間と言うのは「仕上げ」のようなものだと常に考えていた方が良いのです。丁度フィギュア・スケートの代表選手が何千時間も氷上で練習をして、本番の数分の演技にその全てを出すのと似ています。


 例えば、何回も継続しているMICEイベントであるならば、そのMICEの運営中や終了と同時に次回の準備が開始されるとよいでしょう。  確かにスピードが要求される現代では準備に充分の時間をかけられないケースが多いことは確かです。しかし、精度の高いMICEを実現するためには、充分かつ細心の準備と、シュミレーションが必要です。


 先述したように、まずそれぞれのMICEのゴールに即して計画されたそれぞれの目標が、しっかりとプログラム、コンテンツに反映されているかどうか検証します。 サイト、ベニューを始め、それぞれのプログラムの設営、演出、AV、F&B、参加者の動線、ハードウェアのロジスティクス等を、基本計画、実施計画と照らし合わせ、しっかりと整合性があるか検討します。 無理のないタイム・フレームによる進行表、運営組織表、会場図面などが一目瞭然の運営マニュアル(レジュメ)を用意し、最低でも各部署のリーダーには充分なブリーフィングをして配布する必要があります。
 

 セグメントによりいろいろなMICEが想定出来ますが、MICEは多くの関係者を包括して運営されるのが基本ですので、常に運営の責任者は運営期間中、刻々と情報が集まる仕組みを作ることが必要です。


MICE  大きなMICEになればデスティネーションとしての国、市、町などの行政機関との緊密な連携の必要性も生じます。コンベンション・ビューロー、政府観光局、あるいは日本で言えば一般的に県などのMICEの窓口である観光労働部(色々な呼称がある)などとも良い関係を構築する必要があります。  最近我が国の多くの国際観光会議都市はMICEの誘致に積極的で、支援プログラムが充実している都市も多くなりました。もちろん、行政は予算で活動しているので、早い計画の段階から相談してみることをお勧めします。


 「MICEはコミュニケーションの場/機会」であるので、運営中も参加者と主催者、あるいは参加者間が最大・最良のコミュニケーションを可能にする工夫が必要です。特に、初めての人同士のコミュニケーションが下手な日本人同士では、主催者が積極的にコミュニケーションのドライブをかけることも大切ですね。 例えば、会場の縦・横を逆にして使ってみる。フォイヤーなどもチェアやスタンド・テーブルを散らしてコミュニケーションの場を演出するなどの小技も有効です。ゲスト・スピーカーなどの講師にも、一方的なレクチャーよりも、参加者とのインターアクティブな意見交換の機会をふんだんに取り入れてもらう工夫も大切です。  「MICEは情報が集まる場/機会」であるならば、開示される情報も質が高いものに見せる演出も必要でしょう。 ブローシャやパンフレット、ディレクトリなどは、米国では参加者に事前に配布されている磁気カードなどをリーダーが読み、開催後に指定の場所にFEDEXなどで自動的に届く仕組みになっています。


 MICEには、五万と違ったタイプやスタイルが想定出来ますが、一般的に運営に関して想定出来る項目を下記にリストします。チェック・リストとしてご活用頂ければ幸いです。


▼運営マニュアル(組織体制、スケジュール、施設MAP等を含む)
▼会場サービス ▼入場者(あるいは参加者)管理(レジストレーション)
▼安全に関わる事(安全管理、消防・防災、警備、警護食品、情報管理)
▼医療救護 ▼接遇 ▼広報・宣伝 ▼プレス(報道対応) ▼誘致
▼運送計画 ▼演出(エンターテインメント/スピーカー) ▼AV ▼記録

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

プロフィール
MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。