ケーススタディ(主催者の声に学ぶ)

シリーズ「MICE市場はどう変わったか」

⑤ 展示会もニッチマーケットを狙う時代へ

MICESMBCコンサルティングによる恒例の「ヒット商品番付」2008年版から、東西の横綱が消えた。2000年以来、8年振りのことだそうだ。大関に位置付けられたのは「アウトレットモール」と「5万円パソコン」。しかし、この両者いずれも早々に横綱昇進が見込めるような大物には見えない。

このようなヒット商品の小粒化は、今に始まったことではないような気がする。ここ数年のヒット商品番付を振り返ると、2007年の「PASMO」、2005年の「愛知万博」、「アキバ」、2003年の「星野阪神」など、商品というよりもインフラとしてむしろ評価されるべきものが目立つ。あるいは、本当に全国民的な大ヒット商品というには疑問の残るものも多い。私にとって、なんとなく納得のできる商品ということになると、1997年の横綱「たまごっち」まで遡らなければならない。ただし、こちらも90年代初めのパソコンやインターネットといった革命的な技術の進歩を感じさせるものではない。

話は変わって、日産、三菱、スズキの各自動車メーカーが、来年1月にデトロイトで開催されるモーターショーへの出展を取り止める。急速に冷え込んだアメリカの景気がその理由だが、一方でトヨタ、ホンダの2社は出展するという。いずれも「プリウス」、「インサイト」というハイブリッドカーを目玉商品として、積極的に打って出るということらしい。

MICE自動車に関連するエネルギー問題の未来を切り拓く革新的な技術の第一歩をいち早く踏み出した企業は、それを足掛かりにして事業を活発に展開する。そしてその勢いを広くマーケットに向かって発信する。そのためにモーターショーというイベントへの出費は惜しまない。この投資が、不況から脱した後のマーケットでの優位を決することになるものと確信されているからだろう。

博覧会や展示会といったイベントとは、そもそも新しい技術とそれに基づく新商品を世間に公表し、その将来への可能性を知らしめるための「場」でなければならない。そして、その最も大衆化した究極の姿が万国博覧会だろう。

しかし、1970年の大阪万博を超える集客力と話題性を発揮したイベントが、その後日本で開催されたことはないように思う。その原因は、ほぼ唯一だった1970年当時の日本人の未来観が、その後急速に多様化したことに求められるのではないだろうか。この歩調は、冒頭のヒット商品の小粒化とも結びつくものだが、いくら小粒になったといっても、毎年毎年それなりにヒットする商品が出てくるのも事実だ。マーケットを特定し、そのマーケットの嗜好を刺激する技術開発が行われてさえいれば、その発表の場である展示会が廃れることはないはずである。コミケのようなイベントが、ここにきて急に話題を集めだしたように。

筆者:(株)ツーリズム・マーケティング研究所主席研究員 磯貝政弘氏

(株)ツーリズム・マーケティング研究所主席研究員 磯貝政弘氏