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専門性で生き残る:海外高所登山ツアーのアドベンチャーガイズ

-OTAの勢力拡大をどのように見ていますか

古屋氏 古谷 他社には真似のできない専門性の高さも手伝い、以前はフルパッケージのツアーが良く売れていました。しかし近年は、航空券だけは自らOTAで予約するお客様も増え、登山以外の部分の手配ビジネスが弱くなっています。

 ただし、我々のライバルはOTAではなく、インターネット上の情報そのものだと思っています。例えば南米最高峰のアコンカグアに自力で登頂しようとする人が、英語で「アコンカグア 登頂 ガイド」と検索すれば、それらしい人物がヒットしてしまいます。

 しかし契約して現地に行ってみたらガイドが現れないとか、安全への備えが十分でないというケースもあるので、ネット上の情報を見極める力のない人は危険です。当社は今後も、ネットの情報とは一線を画した専門性を武器に勝負していきたいと思っています。

-アドベンチャーガイズの中長期的な目標をお聞かせください

古谷 高所登山は特殊な世界のように見えるかも知れませんが、念入りな準備から登頂までの苦労、登頂後の喜びまでを周囲の多くの人々と共有することができます。また、数ある「コト消費」のなかでも感動できる度合いは非常に大きく、人生の目標や張りになり得ます。

 当社はこの20年間で高所登山の専門性やノウハウを構築し、アドベンチャーガイズならではのアイデンティティーを確立してきました。今後の課題は、高所登山の感動体験をどのようにして新たなマーケットに伝えていくかです。

右が伊藤伴さん(提供:アドベンチャーガイズ) もう1つの課題は人材の育成です。日本山岳ガイド協会認定の山岳ガイドは国家資格ではありませんが、国家資格へと変更する動きがあるので、将来的には有資格者がガイドの仕事だけで食べていけるようにしたいと思っています。

 2016年にエベレスト登頂の日本人最年少記録を作った当社のお客様の伊藤伴さんが、現在では24歳になって国際山岳ガイドの資格に挑戦していますが、このような若い世代も育ってきています。我々のように「お客様を山頂に案内したい」という人材を育てていくことも、登山マーケットの維持と拡大には必要なことだと考えています。

-昨年の4月に旅専の会長に就任されましたが、旅専における目標もお聞かせください

古谷 各社の専門分野が異なるので、1つの団体として活性化しにくい部分もありますが、合同セミナーの開催や情報の共有などで、大手に対抗できない部分を補い合えることは意義があると思います。各社が専門分野のノウハウを構築しているので、「旅専」というブランドをアピールすることで満足度の高い、価値ある旅ができることを広く知っていただけたらと考えています。

-ありがとうございました