2024年春ダイヤ改正、どうなる首都圏の通勤事情

北陸新幹線はいよいよ敦賀へ。東京へ通勤できる?(出典:写真AC、北陸新幹線)
北陸新幹線はいよいよ敦賀へ。東京へ通勤できる?(出典:写真AC、北陸新幹線)

2024年のJRダイヤ改正は3月16日。大きなトピックは北陸新幹線の金沢~敦賀間延伸開業だ。運賃制度も合わせて変更があり、JRの特急列車の全車指定席化が進み、新幹線と在来線を乗り継ぐ場合に在来線側の特急料金を半額にする「乗継割引」が廃止される。今回はJR東日本のダイヤ改正を中心に、首都圏の通勤通学環境の変化を見ていこう。

大正時代に定められた「8時30分始業」

通勤時間帯とひと口にいっても、都心から離れていくにしたがって早くなる傾向がある。通勤時間によっても変わる。総務省が8月に発表した「令和3年社会生活基本調査」によると、出勤時刻の平均は埼玉県が8時12分、神奈川県が8時19分、千葉県が8時20分、東京都が8時43分だ。これは平均だから深夜早朝出勤も含まれるけれど、それでも大多数は日勤だろうから参考になりそうだ。東京都が少し遅めな理由は東京以外から通勤する人への配慮もあるだろう。

マイナビフレッシャーズのアンケート調査記事(参考リンク)は母数が少ないけれど始業時刻は9時が多く、始業30分前を目指して行動する人が多いとのこと。そうなると8時30分に出勤だから総務省の調査結果に近くなる。

始業時刻を調べていたら、人事院「平成8年年次報告書」に官庁執務時間として、「大正11年閣令6号により、原則午前8時30分から午後5時までと定められており、社会生活上最も行政需要の多い時間帯に設定されている」という記述があった。役所の窓口は8時30分に開けなさい、という決まりで、担当者は準備もあるからその前に出勤する必要があった。世の中の8時30分始業はこの伝統が受け継がれているような気がする。

「令和3年社会生活基本調査」には通勤通学時間の調査もあって、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県ともに21年の平均通勤通学時間は36分である。意外と短い。郊外のベッドタウンから都心に通勤する人にとって、通勤時間は60分前後という感覚ではないか。勤労者形態は農家や商店のような住み込みもあるし、近くのコンビニでアルバイトという形態も含まれる。私も在宅だから0分。会社員時代は勤務地の初台まで約80分かかっていた。

通勤電車を語るに「平均36分」は参考になりにくい。しかし、21年の全国平均は31分、16年の全国平均は34分だった。21年は新型コロナウイルス流行の2年目で移動抑制の影響が出ている。現在はテレワークの影響でもう少し短くなっていそうだ。

これらの状況を踏まえて、24年春のダイヤ改正のうち、東京駅9時台到着までの変化を挙げてみた。

北陸新幹線は通勤に使えるか

ダイヤ改正の目玉というべき「北陸新幹線」の敦賀延伸ダイヤが発表された。敦賀駅6時11分発、東京駅9時32分着の「かがやき502号」がある。所要時間は3時間21分。ちなみに敦賀行き最終は東京駅19時56分発、敦賀駅23時14分着の「かがやき517号」だ。東京滞在時間は10時間20分。敦賀、福井は東京へ通勤通学可能となった。家賃の差額と自己負担通勤費用の比較で、通勤通学を選択する人もいそうだ。付き合いの飲み会のある日だけ泊まれば良いし、そもそもそんな日は多くない。

山形新幹線で通勤に使える列車は、新庄駅5時40分発、東京駅9時12分着の「つばさ122号」と、山形駅7時12分発、東京駅9時35分着の「つばさ124号」だ。時刻に変更はないけれど、春のダイヤ改正で新型車両「E8系」が充当される。電源コンセントが全席に付いた。先代のE3系ではグリーン車の全席と普通車の窓際席、最前部最後部の席だけだった。これからは通路側席でも仕事の準備、続きができる。

帰宅便の話として、上越新幹線の最終列車「たにがわ477号」の時刻が繰り上がる。東京駅23時00分発が22時40分発になり、熊谷駅、本庄早稲田駅、高崎駅の到着時刻が現在より20分早くなる。これを逃しても在来線があるとはいえ、東京駅23時19分発、高崎駅1時14分着。疲れた体に約2時間はツラそうだ。

東海道新幹線は静岡地区を拡充しているけれども、報道資料を見た限り、東京方面の通勤用こだまについて特筆するところがない。

通勤新幹線にも新型車両、E8系がお目見え(出典:写真AC、貴重! 新型新幹線 試運転)
通勤新幹線にも新型車両、E8系がお目見え(出典:写真AC、貴重! 新型新幹線 試運転)

千葉→東京 快速の各駅停車化で自治体猛反発

千葉方面から東京方面に「座れる通勤電車」が増える。

総武本線系統の通勤時間帯の特急「しおさい」は3本から4本に増便だ。成東駅6時52分発、東京駅7時43分着の「しおさい4号」を新設する。現在の「しおさい4号」は佐倉駅7時4分発、東京駅8時00分着で、これは「しおさい6号」として継続する。現在の「しおさい6号」も「しおさい8号」として継続する。「しおさい2号」もそのまま。「しおさい」は全列車が船橋駅に停車する。

京葉線系統も通勤時間帯の特急「わかしお」を3本から4本に増便する。茂原駅6時44分発、東京駅8時25分着の「わかしお4号」を新設する。現在の「わかしお4号」は「わかしお6号」として、現在の「わかしお6号」も「わかしお8号」として継続する。「わかしお2号」もそのまま。

その京葉線系統で、日中を除いて「通勤快速」と「快速」が各駅停車に「格下げ」される。これが千葉市、千葉県、外房線沿線自治体、内房線沿線自治体に反発された。朝の通勤時間帯を見ると、各駅停車になる列車は以下の6本。

上総一ノ宮駅6時8分発(外房線)→蘇我駅6時42分発→新木場駅7時17分着→東京駅7時25分着

君津駅6時12分発(内房線)→蘇我駅6時51分発→新木場駅7時28分着→東京駅7時36分着

成東駅6時51発(東金線・外房線)→蘇我駅7時44分発→新木場駅8時16分着→東京駅8時26分着

勝浦駅6時25発(外房線)→蘇我駅7時44分発→新木場駅8時16分着→東京駅8時26分着

成東駅6時51発(東金線)→(誉田駅で上の列車に連結)

上総湊駅6時12分発(内房線)→蘇我駅7時58分発→新木場駅8時30分着→東京駅8時39分着

蘇我駅8時53分発→新木場駅9時35分着→東京駅9時42分着

すべて「各駅停車に格下げ」で所要時間が延びる。JR東日本千葉支社の報道資料も「各駅停車に変更」としている。しかし一部報道で「廃止」と報じられた。これがまず反感の原因になったと思われる。

次の問題は所要時間の増加だ。京葉線の蘇我~東京間の通勤快速の所要時間は41分。同区間の各駅停車は約50分だ。貴重な朝の時間に9分の増加となる。ちなみに現在の各駅停車のうち、途中駅で通勤快速を退避する列車は約60分かかっている。快速と通勤快速の各駅停車化によって、いままで退避のため60分かかっていた各駅停車は退避がなくなり、50分になるから10分の短縮になる。

JR東日本としては、通勤快速・快速の利用者の所要時間を増やしてでも、各駅停車の利用客に便宜を図った。急ぐ人は特急を使ってください、総武線快速も増強しますよ、というスタンスだ。しかし、おそらく通勤快速・快速の利用者は地下鉄に連絡する新木場駅や八丁堀駅の利用者ではないか。そうなると特急も総武線快速の振替も関係なく、ただ9分の増加になってしまう。

実は2本の通勤快速の1つが、新設される特急「わかしお4号」の時間帯と重なる。いっそ通勤快速は両方とも特急化し、新木場と八丁堀に停めたほうが良かったかもしれない。

報道では通勤快速がなくなると20分の所要時間増という見方もあるけれど、それは快速列車を待避する各駅停車の話。退避の元となる通勤快速・快速がなくなるわけだから、現在の「退避なし、各駅停車で50分」の列車がほとんどになり、10分の増加が正解。一部特急の退避は発生するけれども、1日数本といったところだ。

外房3市町はさらに過激で、千葉日報によると「外房線沿線住民の利便性を大きく損ない、生活形態を崩壊させ、今後の沿線地域の発展機会も消失させる暴挙」と抗議したという。沿線住民の大多数の利便性は道路とクルマが左右するだろうと思うし、通勤時間10分程度の増加で崩壊してしまう生活形態とは何か、とても考えさせられる内容だった。

反発の声を上げた市町村は、過剰反応している印象を受ける。

京葉線快速は日中のみに(出典:写真AC、京葉線)
京葉線快速は日中のみに(出典:写真AC、京葉線)

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