中国「ゼロコロナ」正式終了1年も低迷続く訪中外国人 日本にはビザ免除再開せず

1月上旬、北京市の人気観光地、故宮(旧紫禁城)周辺は観光客でにぎわっていたが、外国人観光客の姿は少なかった(三塚聖平撮影)
1月上旬、北京市の人気観光地、故宮(旧紫禁城)周辺は観光客でにぎわっていたが、外国人観光客の姿は少なかった(三塚聖平撮影)

【北京=三塚聖平】中国が、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に食い止める「ゼロコロナ」政策を正式終了してから8日で1年となる。約3年間続けて「鎖国」とも呼ばれた厳格な水際措置を撤廃して海外との往来正常化に踏み出したが、中国を訪れる外国人の回復は思うように進んでいない。反スパイ法に代表される外国人への統制強化、ゼロコロナ政策下で加速したデジタル化の影響が指摘される。

1月上旬、北京市の人気観光地である故宮(旧紫禁城)周辺は、漢民族の伝統衣装「漢服」を着て写真を撮る若者など観光客でにぎわっていた。しかし、コロナ禍前に目立っていた外国人観光客の姿は少ない。

「外国人は最近少し増えたが以前ほどではない」

故宮付近で観光客相手に商売をしている売店の女性は淡々と語った。

北京市文化観光局によると、2023年1~11月に北京を訪れた外国人旅行者は延べ約85万人。前年同期の約18万人からは伸びたが、約300万人だったコロナ禍前の19年同期とはまだ開きが大きい。

昨年1月8日の「ゼロコロナ」終了で、海外からの渡航者への強制的な隔離措置はなくなった。「身の安全」が新たな不安のタネになった。

中国では昨年、改正反スパイ法が施行され、アステラス製薬の日本人社員がスパイ容疑で拘束された。米国務省は昨年6月更新の渡航情報で、中国旅行について「不当な拘束リスク」を理由に再検討するよう米国民に勧告している。

また、コロナ対策下で進んだデジタル化で、観光地ではスマートフォンを使った予約やチケット購入が一般的になった。中国の携帯電話番号や銀行口座、身分証を持っていない外国人が自由に観光するのは難しくなった。スマホを使った電子決済では、海外のクレジットカードとの紐付けを可能にするなど外国人旅行者向けの対応もとられたが、昨夏に訪中した日本人は「利用できない機能もあり不便だ」と指摘した。

政府は外国人の中国離れを防ごうと対策を急いでいる。昨年末には中国渡航に必要なビザ(査証)の取得料金値下げや、中国短期滞在のビザ免除措置についてフランスやドイツなど6カ国にも拡大した。

一方、コロナ禍で停止した日本に対するビザ免除措置は続けている。日本側が再開を呼び掛けるのに対し、中国人の訪日でも同様に免除する「相互主義」を新たに要求している。日本政府関係者は「中国はビザ免除再開を新たな外交カードにする考えではないか」という見方を示す。

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