回復厳しいローカル線 JR西日本、協議会設置の働きかけ加速

乗客が少なく収支が悪化しているJR木次線=島根県雲南市
乗客が少なく収支が悪化しているJR木次線=島根県雲南市

JR西日本が発表したローカル線の収支状況は、改善の見通しが極めて厳しいという実情を強く伺わせる内容だった。対象となった令和2~4年度は新型コロナウイルス禍という事情もあるが、地方路線の沿線人口は一層の減少が見込まれ、JR西は経営が回復する可能性は低いとみる。JR西は、政府が再構築協議会設置を表明した芸備線以外の路線についても協議会設置の働きかけを強める見通しだ。

「コロナ禍から(ローカル線の経営が)回復しても、(中長期的には)むしろ悪化していく見込みだ」。JR西の担当者は28日、ローカル線の収支状況を巡ってこう強調した。背景には沿線人口が地方でさらに落ち込むとの認識がある。また道路網の整備が進み、鉄道利用の減少を加速させている事情もある。

経営状況が特に厳しい芸備線では、JR西がイベントや観光促進を行ってきた。しかし、芸備線の東城―備後落合間では令和4年度の1キロ当たりの1日平均乗客数は20人にとどまった。その他の区間も大きな改善はみられていない。

政府が設置方針を示した再構築協議会は、3年以内をめどに利用を促進するか、バスに転換するかなどを決めるものだ。今回はJR西が設置を要請し、沿線自治体も参加を表明した。

JR西は現時点で、他路線で協議会設置を要請する準備はできていないとしているが、自治体などと事前に協議が進み準備が整えば「設置を働きかけていきたい」(担当者)という。ローカル線の維持が今後、経営へのさらなる負担になることが予想されるため、JR西は協議会設置の働きかけをさらに強める構えだ。(黒川信雄)

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