「万博に人を出す余力ない」会場輸送のバス運転手確保も難航、2024年問題が直撃

全国的に深刻化するバス運転手の不足が、2025年大阪・関西万博の準備に影響している。万博を運営する日本国際博覧会協会は、来場者を輸送するシャトルバスの運行に大阪府内のバス会社の協力を仰ぐが、各社は運転手不足で自前の路線すら維持できない事態に直面。来年4月にはさらなる人材難が予想される「2024年問題」も控え、協会は輸送量確保のため全国のバス会社に広げて協力を仰ぐ。

全国に協力求める

「数字がゼロに近付き壁にぶつかっている」

万博会場への来場者輸送計画を担当する協会幹部はこう嘆く。府内のバス会社に打診している来場者輸送への協力依頼が難航しているためだ。

万博の輸送計画では、来場者数を最大で1日あたり22万7千人と想定。交通手段は会場直結の大阪メトロ中央線新駅「夢洲」が12万4千人で、駅や空港、会場外駐車場からのシャトルバスなどが10万3千人と試算する。

協会は大阪府、兵庫県の主要10駅に設けるシャトルバス乗り場のうち、会場に近いJR桜島駅(大阪市此花区)から70台分の運行協力を府内のバス会社に打診。しかし、必要な運転手約180人のうち100人が足りず「さらなる不足も予想される」との回答が続出した。他の主要駅からの運行も運転手の確保が難航しているという。

背景にはバス業界の苦境がある。阪急バス(大阪府豊中市)が計4路線を11月5日に廃止。金剛自動車(同府富田林市)は全路線を12月20日に、京阪バス(京都市)も大阪、京都、滋賀の計16路線を来春までに廃止する。いずれも運転手不足が原因だ。協会の担当者は「各社は自前の路線を維持するため運転手を奪い合っており、万博に人を出すほどの余力がない」と危惧する。

こうした状況は全国でも同様だ。国土交通省によると、令和3年のバス運転手は約11万6千人で、平成28年から約1万7千人減少。平均年齢53歳で大量退職も見込まれる。来年4月には残業時間の上限規制が厳しくなる「2024年問題」を控えており、日本バス協会は令和4年の輸送規模を来年も維持するには2万1千人の運転手が不足すると試算する。

大阪府内のバス会社の人事担当者は「運転手を確保するには賃金を上げなければならないが、燃料費も高止まりの状態で、不採算路線の廃止や運賃改定が必要になる」と苦悩している。

営業認可を代理申請

日本国際博覧会協会は21日、万博のシャトルバス運行に向け、全国の貸し切りバス会社や旅行会社を対象に、大阪市内で説明会を開いた。大阪府外の業者も運行に参画できるよう、協会が国への営業認可を代理申請することなどを提案した。

説明会には20社、2団体の約30人が会場を訪れ、オンライン中継も実施。協会側は、運転手不足が表面化するJR桜島駅から会場までのシャトルバス運行について、全国の貸し切りバス会社が取引先の旅行会社を通じ、大阪府内のバス会社に運転手を斡旋(あっせん)できるスキームを提案した。

他のバスルートについては、府外のバス会社が府内で原則営業できないため、協会が営業区域外での運行認可を国に代理申請することも説明。東京五輪・パラリンピックの選手輸送でも同様の措置が取られたという。

協会によると、参加者からは運転手不足の状況や、運転手を出向させた場合の損失補塡(ほてん)、待遇などについての質問が相次いだ。協会の担当者は「円滑な来場者輸送のため、事業者と一緒に走りながら課題を洗い出したい」と話した。

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