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『コロナ奮闘記 Vol.8』イタリアには驚いた。この差はいったい何だろう?-風の旅行社 原優二氏寄稿

  • 2020年5月18日

イタリアには驚いた。この差はいったい何だろう?

風の旅行社 原優二
風の旅行社代表取締役の原優二氏

 イタリアには驚いた。「3月中旬から観光目的の移動を禁止し、入国者についても14日間の自己隔離を義務づけてきた。コンテ氏はこの措置について、欧州連合(EU)加盟国と、人の自由な移動を認める『シェンゲン協定』参加国からの入国者を対象に、6月3日から撤廃するとした。観光業は同国の国内総生産(GDP)の約13%を占める主要産業の一つ。コンテ氏は今回の措置が『観光業の再開を後押しするものだ』と述べた。夏のバカンスシーズンを前に、ドイツなど欧州各国からの観光客を呼び込み、経済復興につなげたい考えだ。」(5月17日、朝日新聞DIGITALより)こんな政策は、医療崩壊とそれによる死者数の増加を絶対に阻止することを第一義とする日本では到底考えられない。

 コンテ首相は、すべてのリスクは計算済みだと豪語する。ある程度感染は広がり死者が一定程度は出ても、経済を優先させるということだと思うが、「5月14日時点のイタリアの死者は262人増え累計で31,360人。増加数は前日の195人を上回り、7日以来の高水準。感染者数は992人増の22万3096人。増加数は前日の888人を上回った。」(5月15日 ロイター配信より)といった状況だ。日本の4月上旬の最高値を遥かに上回っている。

 これに比べ、日本は、昨日5月17日の感染者は全国でも24人、東京は5人、大阪は0人である。それでも、39県を除き緊急事態宣言をいまだ継続中であり、県をまたぐ移動は自粛、とくに特定警戒地域との移動は自粛徹底という状態だ。

 この差はいったい何だろう。イタリアにとって観光産業とはそれほどに重要であるというこなのか。しかも、日本では、5月14日発表となった専門家会議が作成した基準では、緊急事態宣言解除の目安の一つは「10万人当たりの1週間の感染者が0.5人以下」となっている。東京なら10人未満を7日間続けなければならない。この厳しさを保ちながら「新しい生活様式」を日常化していくという。

 私は、決して人の命をないがしろにするつもりはないし、日本もイタリアのように何が何でも観光を再開させるべきだなどとは言わない。しかし、日本は、どうやって国内の人の移動を認め、海外との人の往来を可能にしていくのか。ガイドラインの順守だけでは、その道筋が見えてこない。今や、全国の旅館、土産物屋、レストラン、観光施設が悲鳴を上げている。それらの産業は、訪日外国人の受け皿となり、地方を活性化する役割を担ってきたのではなかったか。不要不急として切り捨ててもかまわない価値しかないのか。そして、海外旅行は、インバウンドの裏返しであり、双方向交流である。日本に外国人が来てほしいように海外の諸国もまた日本人に来てほしいのである。

 海外旅行が再開されない限り、経営が成り立たない旅行会社も多かろう。弊社もその一つである。

 じっと待っているだけでいいのか。どこかに風穴をあけないといけない。