訪日韓国市場は「危機的状況」、大都市中心に誘客-明るい兆しも

 日本政府観光局(JNTO)ソウル事務所の山田敬也所長は9月13日、東京・品川プリンスホテルで開かれた第22回「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」で、韓国からの訪日旅行動向について、「危機的な状況に入っている」と現状を報告した。

JNTOソウル事務所の山田所長

 山田所長によると、韓国で行った7月の調査で、訪日旅行への関心度はそれまでの3分の1に激減している。消費者マインドに加え、日本国内への地方便を中心に、日韓の航空機の減便、休止が相次いでいる。

 こうした状況を受け8、9月は訪日旅行の予約も激減し、特に大手ツアー会社の訪日旅行は8割減と甚大な影響が出ている。

 海外旅行先としての日本離れについて山田所長は、「徴用工問題は、訪日旅行に一切影響はなかった。ただ、7月の韓国に対する輸出貿易管理令の改正で状況は一変しました。韓国で日本製品の不買運動が広がり、7月半ばから公務旅行やインセンティブ旅行が減り、8月、9月は一般旅行者の予約もなくなり、訪日旅行はキャンセルばかりといった状況です」と報告した。

 愛国心を現わそうと、訪日旅行をキャンセルしたことを伝えるSNSも多く見らる状況だった。

沈静化に向けて明るい兆しを信じて

 ただ、官製の反日運動には批判が起きるなど、世論にも微妙に変化の兆しがあるという。

 「SNSの書き込みも、最近はネガティブな反応が減りました。周囲に気を遣いながら、誰にも言わずに訪日旅行をする人もいます。沈静化に向けて、明るい兆しも、確実にでてきていることを、お伝えしたい」

 それでも、現状は厳しい。毎月、日韓間に1279便が運航していた空の便は、9月には800便台まで減少するとする見方もある。新たなLCCの就航も再考を迫られ棚上げの状態だ。

 こうした状況で、日本政府観光局は、当面、減便や休止のない日本の大都市圏への訪日プロモーションに集中する考えだ。

 韓国旅行業協会(KATA)とも連携し、沈静化を待ちながら、東京、関西、福岡といった大都市と、周辺都市を組み合わせたツアーのアピールに力を入れることにしている。

 JNTOインバウンド旅行振興フォーラムは12、13の両日開かれ、世界21都市にあるJNTO現地事務所の所長が、各エリアの訪日マーケットの動向を紹介した。フォーラムは年2回開催され、観光事業者や地方自治体など多数が参加している。


情報提供:トラベルニュース社