LINEとベンチャーリパブリック、協業で「価格勝負から脱出」

日本の旅行者をLINE経済圏に
差別化に向け施策展開

LINE本社のロビーで。左からLINEの国京氏、ベンチャーリパブリックの来栖氏  比較検索サービス「LINEトラベル」で旅行事業に参入したLINEと、同じく比較検索サイト「トラベルジェイピー」(Travel.jp)などを運営するベンチャーリパブリックは7月11日、資本業務提携契約を締結した(関連記事)。膨大な数のユーザーに旅行前から旅行後まで「一気通貫」で各種サービスを提供し、自社の経済圏に取り込みたいLINEを、ベンチャーリパブリックがこれまでに蓄積したノウハウやコンテンツで支援する。年内には250以上の旅行会社や航空会社などと接続する、日本最大級の比較検索サービスとなる予定だが「価格勝負から抜け出し、コンテンツや一気通貫のサービス提供などで勝負したい」と語る両社の担当者に話を聞いた。

国京氏  異業種からの参入が続く日本の旅行業界について「裾野は広く伸びしろはある。入り込める隙間も多いと思う」と語るのは、LINE Biz センターO2O事業室ECサービスチームに属し、現在は4名程度の「LINEトラベル」のスタッフのなかで、ベンチャーリパブリックとの協業の舵取り役を務める国京正樹氏。「フィンテックで急変している金融業界などもそうだが、消費者保護の意識が高く、規制が厳しい業界ほど、新しい技術を活かしたサービスが少なかった。ただし現在は、旅行会社なのかIT企業なのか判らないテクノロジー・ドリブンな会社も増えている」と述べ、スマートフォンを1つの軸としてIT技術が大きく進化している現在は「参入には良いタイミング」との見方を示す。

 なお、LINEにおけるこれまでの旅行関連の取り組みは「『LINE TAXI』など、我々がこれから注力したいタビナカに関するサービスを、個別に提供していた程度」とのこと。「LINEトラベル」については「自力で開発することも可能かもしれないが、そこからさらに1社1社に営業して、となると時間と手間がかかる。旅行事業の経験がなかったので、ノウハウを持つ会社と提携した方が良いと考えた」という。

 両社の協業は約5年前に遡り、ベンチャーリパブリックは「LINE NEWS」に「トラベルジェイピー」のガイド記事などを提供。ただしLINEが旅行事業について本格的な検討を始めたのは、「LINEショッピング」などのO2O事業を加速した昨年からだった。ベンチャーリパブリックのトラベル事業部部長を務める来栖孝徳氏によれば「LINEから我々のウェブサイトへの流入が多いことは常々実感していた」ことから、自然な流れで協業が決まったという。

 6月28日のサービス提供開始後の滑り出しについて、国京氏は「すでに『LINE』の公式アカウントの登録者は100万人に上る」と説明。現在は宿泊予約のみを取り扱い、10月に航空券、12月にツアーを扱い始めるまでは「プロダクトとしては不完全」との考えから、ユーザーへの積極的なアピールはしていないが、1ヶ月を待たずに100万人の大台を超えたことになる。昨年に始めた「LINEショッピング」と同様、登録者数は1年間で2000万人程度に増加すると見込んでおり、今後は操作性などのブラッシュアップに努める。販売状況については「具体的な数字は公開できないが、平日は夜間に、休日は昼以降に一定の利用者がいる」という。

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