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「ポスト・コロナ」のツーリズムとは-GoogleやIATAなどが現状と今後を議論

香港政観が大規模オンラインフォーラム開催

モデレーターを務めた香港理工科大学ホテル&ツーリズムマネジメント学院のブライアン・キング氏

 香港政府観光局(HKTB)は6月24日、ポスト・コロナ時代のツーリズムに焦点を当てた世界初というグローバル・オンライン・フォーラムを開催した。「Beyond COVID-19 GLOBAL TOURISM’S NEW NORMAL」のテーマで開催されたフォーラムは、第1部ではマッキンゼーやGoogle、Trip.comといった民間企業の幹部がパネラーとして登壇し、消費者動向やマインドの変化についての見解を発表。第2部では世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)や国際航空運送協会(IATA)、国際エキジビション産業協会(UFI)といった業界団体幹部と香港ホテル業界の重鎮が登壇し、業界動向について意見を交換した。フォーラムは香港、上海、シンガポール、ロンドン、ジュネーブ、パリをオンライン中継で結んで実施され、世界中で4000人を超えるツーリズム関係者が視聴した。

観光産業が世界のGDPにもたらす損失は最大5.5兆米ドル

 第1部、2部を通じ登壇者が共通して訴えたのは、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がツーリズムに与えたダメージの深刻さ。モデレーターを務めた香港理工科大学ホテル&ツーリズムマネジメント学院のブライアン・キング副院長は「世界のツーリズムに対して、第二次世界大戦以降で最も大きな影響を与えた」と表現した。

 Googleでアジア太平洋トラベル&バーティカルサーチのセクターリーダーを務めるハーマイオニー・ジョイ氏は、Googleの検索状況について「フライトやホテルに関する検索数が4月下旬には1月の3分の1程度に減少する一方、フライトキャンセルに関する検索数が3月下旬に急増した」ことを報告。マッキンゼー&カンパニーのパートナー、スティーブ・サクソン氏は「世界のツーリズム産業は0.9兆米ドルから1.2兆米ドルの収益を失った」との試算を明らかにした。

  またTrip.comのCEOであるジェーン・スン氏は、パンデミック以降のキャンセル処理が300億元分にものぼったとして影響の大きさに言及。また同社の予約は1月中旬以降大きく減少し、とくにシンガポールや日本などでは予約の低迷が目立つという。

 各業界団体からも深刻な状況の報告が相次いだ。WTTCのプレジデント&CEOのグロリア・ゲバラ氏によれば、世界中で危機に瀕する雇用は少なく見積もっても9820万人、最悪のシナリオの場合は1億9700万人となり、「旅行観光産業の世界GDPに対して与える損失は最少2.7兆米ドル、最大で5.5兆米ドルとなる見通しで、損失が最大の場合のGDPは前年比62%減となる」と指摘した。

 IATA事務局長兼CEOのアレキサンダー・デ・ジュニアック氏は、「各国国境が閉鎖されたことに伴い航空業界は深刻なダメージを被り、航空会社は収益の半分を失い、すでに倒産する航空会社も出てきている」と航空業界の苦境を説明した。一方、MICE業界の状況についてはUFIの代表取締役社長兼CEOのカイ・ハッテンドルフ氏が説明。20年第4四半期までに予定していた1450億ドル分の見本市が開催されずに終わり、882億ドルの損失が生じるとした。

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需要回復は近距離から
※訂正案内(編集部 2020年7月17日18時20分)
Trip.comのジェーン・スン氏のお名前を誤って表記しておりました。お詫びして訂正いたします。