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週間ランキング、1位はJATAの入退会、20年で会員数はどう変わった?

[総評] 今週の1位は、日本旅行業協会(JATA)の入退会をまとめた記事でした。どんな会社が新しく入ってきたのか、脱落したのはどの会社か、というような興味なのではないかと思いますが、人事異動や倒産の情報が良く読まれるのと似たような印象を受け、なんというか、いかにも人間らしい感じだなと思います。(脱落と書きましたが、事業譲渡や登録変更などその事情は様々です。念のため。)

 この記事を書いていて、そういえばJATAの会員数はどのように推移してきたのかとふと気になり調べてみました。JATAが毎年発行している「数字が語る旅行業」によると、正会員の数は1999年が1304社、2009年が1225社、2019年が1202社ということです。20年で約100社の減少というのが多いのか少ないのかは判断が分かれそうですが、第1種から第3種までの内訳を見てみると傾向がはっきりしており、第1種が約250社減ったのに対して、第2種が約150社増えて補ったことがわかります。


 しかし、もっと派手な変化が起きているのは協力会員と在外賛助会員で、前者はこの20年で約1000社・団体、後者は約600社・団体も減ってしまっています。協力会員というのはJATA正会員を除く旅行業者と旅行業者代理業者、旅行サービス手配業者だそうで、最近はエイチ・アイ・エス(HIS)が正会員から登録を変更したことで注目を集めましたが、1000というのは物凄い数です。また、在外の賛助会員数の推移も、この20年間で日本の海外旅行業界のプレゼンスがどう変わったかが如実に表れている気がします。


 そして正会員である旅行会社の数について言えば、この20年間でのオンライン取引の伸長やインバウンドの急拡大からして、いわゆるリアルエージェントの数はもっと減っているはずです。個人的には過密状態が緩和されれば「酸欠」も少しは解消するものと考えており、数の減少はその意味でやむを得ないと思っていますが、さみしさは当然感じるところです。

 ちなみに、こうして歴年の「数字が語る旅行業」を並べてみることはこれまでなかったですが、なかなか面白いものだと気付きました。今年は2020年という切りのいい年ですので、2020年版が出た際には過去のデータと見比べて記事としてまとめてみたいと考えています。

 また今週は、順位は第5位でしたが日本旅行グループで店舗運営を担う日本旅行サービスが、店頭スタッフとWebを介して友達感覚で海外旅行の相談をできる無料サービスを開始したことをお伝えしています。字面からは読みようのないサービス名「旅er」はいかがかと思いますが(タビラーと読むそうです)、サービスの中身は久しぶりに面白いと強く感じました。

 プロに相談する良さを若い世代にも知ってもらおう、まずは触れてもらおうという意図だと解釈していますが、詳細な個人情報などの対価を求めずに無料でサービスを広く公開するのは勇気がいることだったのではないでしょうか。来店促進の単純なキャンペーンとは異なる反応が得られるのではないかと期待しています。

 店頭サービスをどうしていくのかという超重要な課題のなかで、JTBによる相談料収受の試みが(一旦)頓挫して大変残念でしたが、今回の試みは「そういう手もあったか」と思わされました。実際のマネタイズにすぐ結びつく施策ではないかもしれませんが、とりあえずやってみてユーザーの支持を得られたら加速するというのは現代の定跡の一つです。

 現在は問い合わせ方法がフォームですが、LINEやInstagram、ウェブチャットなどで受けられるようになれば、さらに気軽な友達感覚が実現できるでしょう。日本旅行に限らず、店頭スタッフや添乗員の価値ある知識や経験を企業が活用する方法として、こうしたかたちでの広がり方も今後はあり得るのかもしれません。(松本)