第1回通訳案内士制度のあり方検討会開催-15年7月に最終まとめ

  • 2014年12月25日

 観光庁は12月24日、通訳案内士制度のあり方に関する検討会の第1回会合を開催した。通訳案内士制度創設から60年以上が経過しており、制度に対しさまざまな意見や要望、課題が指摘されている。こうしたなか、同庁では訪日外客数の増加やニーズの多様化に的確に対応できるよう、中長期的な視野で今後の制度を含む通訳案内士のあり方の見直しを会合で検討していく。通訳案内士団体やボランティアガイド団体、旅行会社、経済団体、地方公共団体、日本旅行業協会(JATA)、日本観光振興協会、日本政府観光局(JNTO)など18社・団体が参加した。

 委員長に選出された松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科教授の佐藤博康氏は「今年は1300万人を突破できた。今後さらに(訪日外客数が)伸びるとすれば、新たな立て直しやリフォームなど、何か制度的なものに手を加えなければなかなか時代に乗っていかないだろう」と示唆。参加者に積極的な意見交換と議論への協力を求めた。

 また、観光庁観光地域振興部観光資源課長の長崎敏志氏(※崎のつくりは立に可)は今後の進め方として、関係者の意見を聞いて課題論点を整理するとともに、資格制度の法的位置づけ、資格付与のあり方、資格付与後の品質確保策、資格取得者の利用促進策の4つの柱で議論を進めていく方針を示した。

 第1回会合では現状の整理として、長崎氏が訪日外客市場の現状や国が実施してきた取り組み、通訳案内士の現状やこれまでの通訳案内士制度見直しの検討経緯について解説。2014年4月時点の通訳案内士の登録者数は1万7736人だが、このうち75%が首都圏や京都、大阪、兵庫といった都市部に集中している点や、言語は英語が全体の66.9%と圧倒的に多く、他の言語の通訳案内士が少ない点を指摘した。また、当該地域の都道府県で通訳案内をできる「地域限定通訳案内士」や特区制度などを使った「特例通訳案内士」、ボランティアガイドの現状も説明した。

 さらに、観光庁が今年10月から11月にかけて通訳案内士、地域限定通訳案内士、特区ガイドの資格保有者1万6370名を対象に実施し、6928通の回答を得た郵送アンケート調査の結果も公開。これによると、通訳案内士のうち74%が都市部に集中しており、海外試験を実施して海外在住者の資格取得にも努めてきたが、その割合は1%に留まったという。

 また、通訳案内士のうち75.7%が資格を取得しても未就業のままで、18.1%が兼業。専業は6.2%に留まった。未就業の理由で最も多かったのは一定の収入が見込めないというもの。一方、今後資格を活用して就業したいという割合は3割程度あることから、長崎氏は「できるだけ広げるための環境改善や運用整備が必要」と課題を示した。

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