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香港、MICE誘致を本格化、日本市場に強い期待-ハードとソフトが充実

香港政府観光局(HKTB)は11月13日、「ミーティングス・アンド・エクゼビション・香港(MEHK)」の設立を公式に発表した。現在のところ、この組織の統括者などは決定していないものの、世界各国で15名規模、将来的には30名規模で香港へのMICE(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エグジビション)の誘致をはかる。MEHKを中心に、MICEの動向を探った。

MICEをめぐる世界各国の動向

 MICE市場の誘致を目的に、アジア・太平洋の各国が専門の部署を立ち上げている。タイの「タイランド・イベント・コンベンション&エキシビション・ビューロー(TCEB)」、シンガポールは「BTE MICE」、マレーシアは「Malaysia Convention and Exhibition Bureau」、オーストラリア・シドニーでもMICE部門として「Business Events Sydney」を立ち上げるなど、ビジネス需要の大型グループの誘致に向けた体制を整備している。また、ハワイ、韓国、そして日本も国際会議、展示会などを主体とするMICE誘致に積極的な姿勢を示している。

 MICEの誘致を積極化する理由は、レジャー客と比べ滞在日数が長いこと、消費金額が多いことによる開催地の経済効果だ。旅行会社をはじめ、航空会社、ホテルの各企業も、グループの取扱による需要の確保、さらに国際会議や展示会の開催周期が決定している場合は需要の先読みが可能になり、安定的な収益が確保できる。そして、大型であればあるほど、会場の手配から運営までを手がけることで、ビジネス・チャンスは大いに広がる。ホテルでも大型だけでなく、小型の会議需要の取り込みもめざし、グループごとに利用できるサイトを立ち上げるなど、MICE関連のビジネスの取り込みが加速している。

 ただし、企業関連の旅行需要については現在の経済環境下で積極的なプロモーションをすることに対する懸念が、香港での記者会見で指摘された。これに対して、HKTB会長のジェームス・ティエン氏以下、「苦境の時期にあるからこそ、シェアを高めていくには絶好の機会」と前向きに捉え、関係者の意思が一致している。特に、ティエン氏は「(世界経済の)回復が始まった時には、いち早く競争相手と比べて大きく伸びることができる」とコメントする。また、もともとは4月の時点で香港政府からの予算承認がおりており、発表がアメリカ発の金融危機後になったタイミングの問題でもある。いずれにしても、世界観光機関(UNWTO)の予測などからも東アジア地域の成長や、今後のMICE市場の成長は予見されており、HKTBはこの予測にあわせたものだといえる。

 ビジネス環境として、中国市場を背後に控えた地政学的な香港のポジショニングも関係者が一致した考えを持つ背景にある。世界の消費市場の大舞台が「中国」に移るともささやかれるなか、航空路として130都市、1日350便が就航する香港国際空港を持ち、約170ヶ国と査証免除を結んでいることも、世界各地からの集客に大きく寄与することが想定される。こうしたデスティネーションとして差別化できるポイントについては、新たなブランド・キャンペーンを展開し、MICE用にプロモーションビデオを作製しているほか、ウェブサイトを活用したダイレクトマーケティングも実施する。

 MICE関連の開催状況は1年から2年先の予約があり、毎年開催される展示会やイベントも多く、おおよその需要が想定できる。さらに、アジア・ワールド・エクスポで新たに12件、香港コンベンション&エクゼビション・センターでは今年と来年に新たに11件の展示会の誘致に成功していることも、世界的な不況の中でも強い意思でプロモーションを展開していく方針を支えているようだ。


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香港の強みと日本市場への期待

HKTB日本事務所によると、同事務所が日本発のグループに提供する特典を設けており、その限る申請状況は増加傾向を示している。2005/06年度は400件から450件、人数で2万人から2万5000人であったところ、2006年以降は年間600件から700件、人数は3万人から3万5000人と約50%増と好調。さらに、2007年には日本から5000名規模のインセンティブ旅行を受け入れた実績もあり、インフラ体制が整備されていること、さらに各施設のアップグレードについても紹介していく。

 HKTBによると、香港への訪問者数2816万9293人のうち、MICE関連は173万8568人で、シェアは6.1%ほど。ただし、その経済効果は高いとしており、記者会見に顔をそろえた香港の航空会社代表協会、ホテル協会、旅行業協会の代表者らは口をそろえて、単価、そしてショッピングなどを含めた総消費額が高いことを強調する。

 また、香港へのコンベンションでの訪問者は日本と韓国をあわせた北アジア地域は3726人で、コンベンション目的の訪問者に占めるシェアは11.2%、展示会には6万6788人でシェアは7.9%である。さらに、個別企業のミーティングやインセンティブでの訪問者数は12万6779人でシェアは14.7%と、北アジア地域のシェアは高い。このため、HKTBでは重点地域として、マーケティング専任担当者を置く市場に、新興市場の中国、インド、従来から企業需要の多いアメリカ、イギリスに加え、日本と韓国を指定している。これらの戦略的市場を中心に、MEHKはMICE関連の窓口として一元化し、複数に渡る行政機関、民間企業などの橋渡しだけでなく、顧客への提案や入札にも積極的に参加するという。

 MEHKの立ち上げに携わったHKTBジェネラル・マネージャーのパトリック・コック氏は、特に日本へのMICE関連について期待を示す。「2009年は日本香港観光交流年で活発な往来が想定される」といい、政府・行政関係から青少年交流の民間まで幅広い訪問者を期待している。日本と香港間の航空自由化の合意以降、香港と地方都市の路線が開設されていることも追い風とし、また円高で日本市場が海外旅行への意欲を高める環境にあることも好材料としたい考え。HKTB理事長のアンソニー・ラウ氏によると、2009年の日本発の需要見込みについて掃除・生活関連のフランチャイズビジネスを展開する企業が2000名のインセンティブを実施するほか、服飾関係企業の大型グループの訪問も決まっているという。HKTBでは来年2月に東京、大阪の両都市でイベントを開催、MICEの受け入れを促進していく。


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MICE関連のサービスの高い充実度

香港国際空港でのエスコート  
 130都市、1日350便が運航される香港国際空港では、MICE目的の旅行者へのスムーズな対応をめざしたサービスを取り入れている。そのひとつが歓迎エスコート。VIPがいる場合だけでなく、グループで行動する場合には、入国審査や手荷物受け取り、税関審査など、手間取ることもあり、その個人個人に対する対応をしていく必要がある。このエスコートサービスでは、飛行機を降りたゲートで旅客の名前を掲げて出迎え、入国審査も審査官の応対にも対応してくれる。手荷物は大型グループの場合、通常の旅客とは別のターンテーブルを用意する場合もあるが、こうしたシーンにもきちんと付き添ってくれる。 香港での目的地に行くための交通機関への乗継まで案内してくれ、スムーズに宿泊施設まで到着できる。

なお、2007年2月にオープンしたターミナル2は、ツアーバスの乗り場としても利用ができる。大型団体の場合にはツアーデスクを設置し、第1ターミナルと第2ターミナルの移動の導線も簡単で、大人数の移動にもグループ全体の動きを把握しながらバスへのスムーズな乗継が可能だ。実際にシャルレの5000名規模のインセンティブでもターミナル2からバスに乗り継ぎ、スムーズな空港内の移動を行った事例もある。


▽香港国際空港
http://www.hongkongairport.com/eng/index.html

太極拳の体験とピークタワーの屋外展望スペース  
 団体の希望、要望によるが、チームワークの向上をはかるために、チームビルディング・プログラムとして、訪れた地域に固有の活動を組み込むことも多い。香港では、太極拳体験クラスを実施することができる。講師はグループが希望する場所に出張することも可能。この太極拳のレッスンに日本人団体向けに日本語の講師を手配することが多いという。

 今回の訪問では、香港の観光名所でもあるピークタワーの屋外展望スペースで太極拳を実施。この展望スペースのウェスト・デッキは団体で貸し切り、ケータリングの手配も可能だ。ケータリングはピークタワー内のすべてのレストランから手配することができる。ピークタワー内には、和食レストランもあり、旅程中の食事手配のバリエーションを考慮した提案もできそうだ。


▽ザ・ピーク
http://www.thepeak.com.hk/

アクア・ルナ  
 「アクア・ルナ」はビクトリア湾一周約45分でクルーズする80名収容の帆船で、団体チャーターも可能。120名の収容が可能な「スターフェリー・ハーバーツアー」とあわせて、香港の夜を楽しんでもらうプログラムとして活用できる。アクア・ルナはジャンク船で、外見は香港の中国らしさや歴史の一端を感じさせるが、中は快適な座席やソファーが揃い、リラックスする場所もある。乗船場所はカオルーン側のチムサアチョイのフェリー・ピア、香港島側ではセントラルのクィーンズ・ピアで、宿泊場所や集合場所なども考慮した手配が可能だ。


▽アクア・ルナ
http://www.aqualuna.com.hk/