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スパで感じるハワイらしさ~新オープンのモアナ・ラニ・へブンリー・スパ・バイ・ウェスティンを訪問~

現在、旅行情報誌などに紹介されているワイキキのスパは18軒以上といわれる。現地ならではの文化や雰囲気が求められており、施術やトリートメント製品にも現地由来のものを使用するスパが人気だ。また、新たな取組みも増えつつあり、単なるリラクゼーションとしての場所から、デスティネーションを感じられる場所に変化している。10月にモアナ・サーフライダー・ウェスティン・リゾート内にオープンした、注目の「モアナ・ラニ・へブンリー・スパ・バイ・ウェスティン」でも、ハワイならではのメニューを提供している。(取材:フジタ佳子)

ハワイらしいスパとは

歴史、海や自然に包まれるハワイの文化を「ショー」で表現  ハワイらしいスパとして筆頭にあげられるポイントといえば、ハワイの伝統施術「ロミロミ・マッサージ」が受けられることだろう。「ロミロミ」の意味である「ゆっくりと長いストロークで揉みほぐす」手法は、古代ハワイで医者やセラピストの役目をしていたクプナ(聖職者、長老者)が治癒として行なっていたという神聖な施術を発祥としているもの。もちろんワイキキ内にあるスパのほとんどで、ロミロミ・マッサージを提供している。

 さらに、施設内のインテリアやBGM、ハワイならではの空間デザイン、気候を感じられる施設のつくりといったハードの雰囲気に加え、使用するオイルなどのトリートメント製品にマンゴー、リリコイ、ココナッツなどハワイ産の植物、海塩、粘土などを使用していることもハワイらしいスパの重要な要素だ。最近では、リフレクソロジーやデトックス、岩盤浴設備まで備えたスパから、ロミロミ・マッサージのレッスン講座を持つサロンなどもオープンしており、スパを基盤にした新しいアクティビティとしての側面も見えつつある。今後ハワイでは、ハワイらしさの基盤をしっかりと持った施設であることに加え、それぞれ独自の斬新性を持ったスパが注目されるだろう。こうした意味から、10月にモアナ・サーフライダー・ウェスティン・リゾートにオープンした「モアナラニ・へブンリー・スパ・バイ・ウェスティン」も、注目のスパの一つだ。

ワイキキ初のビーチフロント・スパ

「モアナラニ・へブンリー・スパ・バイ・ウェスティン」は、ウェスティン独自の「ヘブンリースパ・バイ・ウェスティン」に、ハワイ伝統のヒーリング施術を加えたトリートメントを提供する。施設面積は約1500平方メートルあり、プライベート・バルコニーとジャクジー付きのカップル向けスイート2室、マッサージ・ルーム9室、ボディートリートメント・ルーム2室、ビシーシャワーつきのウォーター・セラピールーム1室、フェイシャル・ルーム3室と24時間営業のエクササイズルームから構成。部屋数の多さとゆとりある空間は、ワイキキのほかのスパではなかなか体験できないものだろう。

 もう一つ、特徴としてあげられるのが、ワイキキで初のビーチフロント・スパであること。インテリアやデザインなどのほか、周囲の環境そのものからもハワイらしい雰囲気が伝わってくる。実際、チェックイン後に施術の予約時間を待つ間、ジャクジーバスやスチーム、ドライサウナなどでくつろいでいるときにも、ビーチからハワイならではの爽やかな海風が感じられる。スパにいながら、天然のハワイらしさに触れられる。静かで、のんびりした雰囲気がただよい、ワイキキの喧噪が嘘のようだ。

このほか、ハワイの海塩「アラエ」の“お清め”も、このスパオリジナルで、しかもハワイらしい演出といえるだろう。セラピーを受ける人はその前に、アラエの入ったボウルに手をかざしたり、塩に触れて日頃のストレスを置き去るように勧められる。この塩はトリートメント後に回収し、その日の営業終了後、ワイキキの海に流すのだという。

オリジナルセラピーとホスピタリティ

 今回は同スパでしか体験できない新しいホットストーン・セラピー「ローラーセイジ」を体験してみた。同スパには8名のスタッフのうち2名が日本人で、今回は日本人の智子さんが担当。東京、セントルイス、サンフランシスコで医療関係のセラピストとして10年近く経験を積んできた経歴を持ち、日本とサンフランシスコでは表彰されたこともあるという。ちなみにロミロミ・マッサージについて「奥が深い。マッサージをするにつれて、ゲストとの呼吸が連動し、楽しい」と智子さん。

 ローラーセイジは、ホットストーンマッサージの一種。ただし、使用する水晶にはハワイのマナ(エネルギー)をこめている。セラピストは手に石を握り、パワーを吸収しながら、マッサージとの相乗効果を高めてゆく。

 4種類の石のなかから、ゲストの状態にあわせて2種類を選び、今回は安定と落ち着き、循環を促すという「ヘマタイト」と、調和、ロジック、消化器官を促進する「ソデライト」を選択。石と手の両方を使うので、それぞれの患部に適した施術であるのがわかる。卵型のストーンの圧力が筋肉の繊維に入るかと思いきや、同時に智子さんの手による揉みほぐしがあり、この繰り返しが心地よい。しばらくすると新陳代謝の高まりからか、軽いスポーツをした後のような心拍の高まりが感じられる。

 施術そのものも良かったが、ゲストを癒してあげたいという彼女のホスピタリティが、安心感をいっそう高めてくれたように思える。施術中の会話からも心身をこめた気持ちが伝わる。智子さんは、お客様が疲れているほど、マッサージをする充実感、楽しさを感じるそうで、「人を癒すセラピーと出会い、人生が変わった」そうだ。海外のスパではセラピストとゲストのコミュニケーションが、より一層、印象の影響となるかもしれない。特にアロハスピリットを売りにするハワイでは、まさにハワイらしさを心身から感じられる場所の1つになるといえるだろう。

旅行者の提案に、スパのメニューや新たな動き

 スパでは日本市場に向け、さまざまな提案をしている。例えば、同スパのあるモアナ・サーフライダー・ウェスティンリゾートを運営するスターウッド・ホテル&リゾート・ハワイは、挙式前でなく、「挙式後の疲れを癒す」としてプライベート・スイートでの「カップルズ・リニューアル」を用意。来年上期から主なホールセラーのパッケージツアーにもスパ体験が登場するという。

 また、アイディアとして、日本からの到着後、アーリー・チェックインのないゲストや、隣島へのフライト乗り継ぎの待ち時間などにもスパを組み込むこともできるだろう。結婚記念日などのアニバーサリーを目的とする熟年カップル、夫のMICEに同行した夫人を対象としたオプションなども積極的に提案したい。訪問日も日本人の熟年女性の2人組が訪れていたし、ホテルのロビーでは40代後半と思われる男女がチェックインを待っていた。

 ワイキキでは今後、幾つかのスパのオープンやリニューアルが予定されている。例えば、ロイヤルハワイアンホテル内のスパ「アバサ」は拡張工事に入り、2009年1月までに再オープンを予定している。また姉妹店として11月20日にはシェラトン・ワイキキホテルにシックでモダン、自然素材にこだわったスパ「Khakara」がオープンする。今回訪問したモアナ・ラニ・へブンリー・スパ・バイ・ウェスティン内にもスパ・メニューを提供するダイニングがオープンする予定で、ハワイ旅行の演出としてぜひ、スパを利用していきたい。