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京都の「オーバーツーリズム」も今は昔、外国人観光客の回復を熱望

  • 財政難の京都市に新型コロナが追い打ち、訪日客の観光収入に期待
  • 「お客さんは選んだらあかん」と錦市場商店街振興組合の初田理事長
京都、外国人観光客の回復を熱望

狭い路地を埋め尽くし、マナーを守らない外国人観光客に対して住民が不満を募らせていた京都市は今、外国人観光客の回復を熱望している。慢性的な財政難に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が追い打ちをかける中、訪日客がもたらす観光収入に期待を寄せる。

  京都市議を務めた村山祥栄氏も外国人観光客の受け入れ再開を待ちわびていた1人だ。2019年に出版した「京都が観光で滅びる日-日本を襲うオーバーツーリズムの脅威」では、観光産業によって地元の商店や住民が追い出されかねないと警鐘を鳴らしたが、今では京都の繁栄には多くの観光客の来訪が欠かせないと考えている。

  村山氏は6月後半のインタビューで、「観光客によって生かされていたということで京都市民は改めてこの2年間実感したと思う」と述べ、「そういう意味で少し市民の観光客に対する見方が変わってきた」と語った。

  日本は約2年間、新型コロナ感染拡大を抑制するために外国人観光客の受け入れを停止していた。岸田文雄政権は、添乗員付きパッケージツアーを対象に外国人観光客の受け入れを6月10日から再開。ただ、入国者数は1日2万人が上限としており、新型コロナ禍前の状況にはほど遠い。

  観光庁によると、19年の訪日外国人数は過去最高の3188万人で、消費額は4兆8135億円だった。

外国人観光客の回復に期待

出所:日本政府観光局

  観光客の不在で人口約145万人の京都市は大きな打撃を受けた。新型コロナが観光産業を襲う直前の19年、入洛(にゅうらく)観光客は5000万人を超え、外国人観光客は約890万人と4年前の約480万人から倍近くに膨らんだ。

  観光客の急増は地元住民の反発を招き、京都市は閑静な住宅街での民泊営業を大幅に制限する条例を制定したほか、宿泊税を導入。「京都観光に関する市民意識調査」によると、地元住民の大半が主要観光地周辺の交通渋滞やバス・地下鉄などの混雑に不満を抱いていた。

Japan’s Once Aloof Kyoto Longs For Return of Foreign Tourists
町家ホテル「京都高瀬川別邸」の客室
Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg

  既に財政難に苦しんでいた京都市で、こうした状況は20年に一変した。  

  門川大作・京都市長は、新型コロナのパンデミックで文化・芸術や観光など「京都の強みが全部弱み」になったと指摘。「コロナ禍が落ち着いてきて、外国からのお客さんもお越しいただける」と、多くの市民が歓迎していると言う。

  京都市観光協会によると、5月の外国人延べ宿泊数は19年同月比で約99%減。通常なら繁忙期の同月に市内主要ホテルの客室稼働率は50%程度にとどまり、割引価格での提供を余儀なくされた。

Japan’s Once Aloof Kyoto Longs For Return of Foreign Tourists
京都錦市場商店街
Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg

  町家ホテル「京都高瀬川別邸」を運営する桜花爛漫の滝本住雄社長によると、外国人観光客が途絶え、従来は国内観光客の大部分を占める高齢者も感染リスクを警戒して旅行を控えたため、営業は通常の10-30%程度の水準で推移していたという。コロナ禍の間は観光客がほとんど町の中にいない「びっくりするぐらいの状況」だったと振り返った。

  岸田首相は5月のロンドンでの講演で、他の主要7カ国(G7)並みに水際対策を緩和すると表明した。

  滝本氏によれば、政府は外国人観光客の受け入れ再開で十分に大胆な措置を取っていない。足元で円安が進み、景気が冷え込む中で「経済を持ち上げる最大のチャンス」だと指摘。ホテル業界や観光業界のみならず経済界からも、欧米並みに「入国を開放しないと日本経済はもたないという声が非常に多く出ている」と言う。7月10日の参議院選挙後に入国制限が緩和されることに期待感を示した。

Japan’s Once Aloof Kyoto Longs For Return of Foreign Tourists
花見小路では私道での撮影禁止(京都・祇園)
Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg

  京都錦市場商店街振興組合の初田和久理事長は、観光客に戻って来てほしいだけで、客のマナーばかりこだわってはいけないと語る。かまぼこの製造を手掛ける同氏の店では、売り上げが引き続きパンデミック前の水準を約60%下回っている。

  錦市場がにぎわいを取り戻すことが先決で、ルールを決めるのは後からでもいいと言う初田氏は、「お客さんは選んだらあかん」と語った。

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原題:

Once Overcrowded Kyoto Now Longs for Foreign Tourists in Japan(抜粋)

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