IATA事務総長、空港での再生燃料義務化は普及を阻害
【ドーハ=林英樹】世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務総長は21日、空港で再生航空燃料(SAF)の利用義務化を検討している欧州連合(EU)について「手本にして従うべきではない」と批判した。供給量の少ないSAFをめぐる争奪戦を過熱させ、普及を阻害することになると指摘した。
SAFは航空機ジェット燃料の二酸化炭素(CO2)を最大9割減らせるバイオ燃料の一種。IATAは2050年の脱炭素目標を掲げており、実現のためには年4490億リットル分のSAFの生産が必要になると試算する。ただ足元ではフィンランドのネステなど一部の企業しか商用化しておらず、生産量は年1億2500万リットルにとどまっている。
EUは現在、30年までに域内のすべての空港で航空会社に対し、SAFを燃料全体の5%分使うよう義務づける法案を審議している。ウォルシュ氏は空港ごとに使用量を決めるやり方について「生産を分散することで規模の経済の発展が後れ、価格が高止まりしたままになる」と指摘した。
またEUが空港内の貨物輸送など航空機以外のトラック・バスなどでもSAFの使用を促す点についても触れ、「航空機でないとSAFを使う環境上のメリットは出ない」と強調した。
IATAは、従来のジェット燃料と比べ2~4倍高いSAFの単価引き下げには、政府支援をベースとした大規模な供給体制の整備が不可欠だと訴えている。欧州エアバスとオーストラリア航空大手カンタス航空が豪州政府の支援を受け、豪バイオ・スタートアップに投資する基金を設立するなど、官民でSAFに大規模投資する事例が広がりつつある。