ネオニューノーマルで「立食」再開へ アルピコホテルズ、社交の場にかける矜持

パネル越しに会話や名刺交換ができる「ネオニューノーマル」の立食スタイル=長野県松本市のホテルブエナビスタ(原田成樹撮影)
パネル越しに会話や名刺交換ができる「ネオニューノーマル」の立食スタイル=長野県松本市のホテルブエナビスタ(原田成樹撮影)

人脈は濃厚に、飛沫(ひまつ)は希薄に-。アルピコホテルズ(長野県松本市)は、飛沫防止用クリアパネルを設置した立食スタイルの提案を始めた。新型コロナウイルス禍がホテル業界を直撃し、とくに宴会需要の低迷が続く。着座ではパネルで席を区切るニューノーマル(新常態)が浸透してきたが、ビジネスや政治、研究などで自由に人間関係を築く場としては立食にかなわない。新年度、バージョンアップした対策で立食の再稼働を目指す。

宴会部門は7割減

松本など中信地方の交通や観光を核とするアルピコグループは、事業ごとの専門性を高めることなどを目的に4月に機構改革を実施。ホテルブエナビスタ(松本市)や美ケ原温泉・翔峰(同)など6つの宿泊施設は、新会社アルピコホテルズに集約した。新会社としての取り組み第一弾が、回復の兆しがみえない宴会分野をてこ入れするため、ニューノーマルをさらに進化させた「ネオニューノーマル」の提案だ。

同社によると、コロナの感染が広がったときに宴会禁止を通達した企業が多く、講演型の会議は開催しても、従来はセットだったパーティーが行われない。宿泊やブライダルは回復の兆しがみえても、宴会部門の売り上げは「コロナ前の7割減ほど」に低迷したままだという。

「ニューノーマル」の着座式宴席。席の間に透明なパネルが置かれている=長野県松本市のホテルブエナビスタ(原田成樹撮影)
「ニューノーマル」の着座式宴席。席の間に透明なパネルが置かれている=長野県松本市のホテルブエナビスタ(原田成樹撮影)

着座と組み合わせで

同社では、宴会の代わりに、ホテルで調理した豪華弁当をお土産として持ち帰ってもらえるテイクアウト対応を行ってきた。新年度は、信州の地酒なども選べるようにするオプションも追加した。

宴会も着座であれば、参加者の距離を取り、感染対策が取りやすい。しかし着座式では、皆の前ではオープンにできないことを話したり、1対1でじっくり会談したりといったことができず、情報交換が弾みにくい。

「ネオニューノーマル」では、ハイテーブルにクリアパネルを設置。パネルの下部には隙間を開け、お互いの声を聞こえやすくし、名刺などの受け渡しも行える。まずは、着座スタイルをベースに「コミュニケーションポイント」として何カ所かハイテーブルを組み合わせる提案をし、立食への回帰を促す。

同社では「春はさまざまな総会が開かれる」とし、株主総会や業界団体、学術団体などでの宴会の利用の増加を期待している。

他社「要望あれば対応」

県内の同業他社も関心を寄せる。ホテル国際21(長野市)は、クリアパネルを今年度は更新用も含めて新たに200枚追加。現状では立食パーティーの予約はない状況だが「要望があれば今後対応していく」と話す。

長野ホテル犀北館(さいほくかん)(同)は「お客さま同士のお酌も心配で、立食を推奨する考えはない」とまずは着座式を勧めている。ただ、「企業などもパーティーで感染者が出ることを恐れている」と実感しながらも、顧客の要望があれば対応も検討するとしている。(原田成樹)

会員限定記事会員サービス詳細