アングル:持ち直し始めた東南アジア観光業、各国で「温度差」

アングル:持ち直し始めた東南アジア観光業、各国で「温度差」
4月13日、東南アジアの観光業は新型コロナウイルスのパンデミックが響いて、2年もの開店休業状態を強いられてきた。写真はシンガポールのショッピングセンターで3月撮影(2022年 ロイター/Caroline Chia)
[13日 ロイター] - 東南アジアの観光業は新型コロナウイルスのパンデミックが響いて、2年もの開店休業状態を強いられてきた。域内で入国規制や隔離措置が解除される動きが相次ぎ、旅行者は戻り始めている。それでも全面的な回復には時間がかかりそうなばかりか、かつてずっと集客の中心だった幾つかの観光スポットが人気を失っている。
旅行会社フォワードキーズによると、3月下旬までに東南アジア方面への国際線予約件数は2019年の38%相当まで回復した。年初時点では10%弱の水準だった。 
予約増のけん引役はシンガポールとフィリピン。両国は現在、ワクチン接種済みの旅行者にはすぐ結果が分かる抗原検査を到着前に義務付けているだけだ。対照的にタイは複雑な規制手続きを今も課しているため、かつての世界の旅行先人気トップの座を明け渡してしまっている。
フィリピンのロムロ・プヤット観光相は「われわれは真っ先に全ての面倒な手続きを撤廃した。旅行者は到着してすぐ自由に動けるので、とても喜んでくれている」と語った。
フォワードキーズのデータを見ると、シンガポールとフィリピンの予約件数はそれぞれ19年の72%と65%まで戻した。一方、タイは24%にとどまっている。
タイのホテル協会幹部は「到着時のPCR検査には1人2000-2500バーツ(60-75ドル)かかることもあり、特に団体旅行では出費が大きくなりかねない。(それが)人々にタイ旅行を尻込みさせている。別の国が入国規制を設けていないとすれば、面倒が少ないそちらに向かうだろう」と述べた。
<変わる顔ぶれ>
東南アジアを訪れる旅行者の顔ぶれも変化している。かつてアジアで最も多く押し寄せていた中国人は、厳格な移動制限措置で閉じ込められたままだ。
タイでは19年の外国人旅行者4000万人の4分の1強が中国人だった。今年はマレーシアや他の近隣東南アジア諸国からの500万─1000万人の入国を予想している。
日本からの東南アジアへの旅行者はまだ極めて少ない。かつて大勢訪れたロシア人は同国のウクライナ侵攻もあって姿を消してしまった。
一方、フォワードキーズによると、今年これまでに東南アジアを訪れた外国人旅行者のうち欧州勢は3分の1で、19年時の22%よりシェアが上がった。北米からの旅行者のシェアは19年の9%から21%と、2倍以上に膨らんだ。逆に他のアジアからは19年の57%から24%にシェアが縮小している。

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