海外旅行代わりに近場で「ステイケーション」  需要掘り起こし

近場のホテルにゆっくり滞在して楽しむ「ステイケーション」と呼ばれる休暇の過ごし方が、新型コロナウイルス禍で難しくなっている海外旅行の代わりとして注目を集めている。訪日客の減少などに悩むホテル側は、宿泊代に食事やイベントの料金を含めたプランを増やすなどして、新たな需要に期待をしている。

ステイケーションとは、英語の「ステイ(滞在)」と「バケーション(休暇)」を掛け合わせた言葉。感染拡大下でもホテルの出店が続く京都では、新たな需要の掘り起こしが始まっている。

旧任天堂本社を改修した「丸福樓(まるふくろう)」(京都市下京区)は、食事を全て宿泊代に含むオールインクルーシブ型ホテルとして1日に開業した。1室2人利用で1泊10万円から(税・サービス料込み)と五つ星ホテル並みの料金だが、朝・夕食に加え共用ラウンジで軽食を好きな時に味わえるため「館内でゆっくり過ごしたいお客さまにはお得」と担当者。花札などを製造・販売していた山内任天堂時代の建物装飾が随所に残されており「任天堂ファンにはたまらない、滞在そのものを楽しめる施設」と、ステイケーション需要を期待する。

京都では他にも「パークハイアット京都」(同市東山区)が、スイートルームで総料理長が腕を振るう食事付きプラン(1室2人利用で1泊約165万円から)で一定の実績を積めたことから、当初3月までの販売期間を9月まで延ばした。「海外旅行の代わりとしての需要はかなり強い」(広報担当者)として、高額商品ながら連泊利用もあることを明かす。

「パークハイアット京都」ではスイートルーム「パゴダハウス」で総料理長と会話しながら、コース料理が味わえる=京都市東山区(同ホテル提供)
「パークハイアット京都」ではスイートルーム「パゴダハウス」で総料理長と会話しながら、コース料理が味わえる=京都市東山区(同ホテル提供)

ANAクラウンプラザホテル大阪(大阪市北区)は、ラウンジでの軽食やプール、サウナ利用付きで、正午のチェックアウトを午後9時に延ばす関西在住者向けプラン(1室1泊、3万1千円から)を販売しており「これを機に良質なホテルのサービスを知ってほしい」(広報担当者)。近鉄・都ホテルズ運営の志摩観光ホテル(三重県志摩市)もゴルフ場でのプレーや食事を含む「オールインクルーシブ」型プランを28日から提供する。

医薬品製造のピップ(大阪市中央区)が2月に実施した「ステイケーションに関する実態調査」によると、18~39歳女性500人のうちステイケーションの体験者は12%。88%が未経験だったが、そのうち32%はステイケーションに「興味がある」と回答した。

「近場で旅行気分を味わえる」のが主な理由で、同社は「コロナ禍の今だからこそ、長距離移動をすることなく非日常を楽しめる点に魅力を感じている」などと指摘している。

ホテル「丸福樓」に併設されたレストラン。宿泊すれば朝夕食も付く=3月20日、京都市下京区(田村慶子撮影)
ホテル「丸福樓」に併設されたレストラン。宿泊すれば朝夕食も付く=3月20日、京都市下京区(田村慶子撮影)

また、リクルートの旅行研究組織「じゃらんリサーチセンター」が令和3年9月に実施した調査では、国内で過去1年間に宿泊旅行をした907人の約半数が「宿でのんびり」することを理由に挙げ、回答項目でも「温泉、露天風呂」に次ぐ2位となった。この結果について同社は「コロナ禍において宿での滞在を中心とし、周遊を控える近場の旅に大きくシフトした」とみている。(田村慶子)

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