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九州全県まん延防止、宿泊施設「耐えるしか」

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 新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が27日、新たに福岡、佐賀、大分、鹿児島など18道府県に適用され、九州全県を含む34都道府県に拡大された。各地の宿泊施設は、コロナ下での経済活動両立に向けて感染対策を講じてきたが、ワクチン2回接種者の感染も目立つ変異株「オミクロン株」の急拡大で打撃を受けている。一方、感染対策の重要性は変わらないとして、収束後を見据えて強化に乗り出す温泉街もある。

 「県の認証も取得したのに。こんなに厳しくなるとは……」

 北九州市小倉北区の「JR九州ステーションホテル小倉」。取締役の帯山浩司さん(49)は客の少ないロビーを見つめ、肩を落とした。

福岡県による宿泊施設版の認証を受けたホテル。自動チェックイン機器を導入するなど感染対策に力を入れている(27日午前、北九州市小倉北区のJR九州ステーションホテル小倉で)=田中勝美撮影
福岡県による宿泊施設版の認証を受けたホテル。自動チェックイン機器を導入するなど感染対策に力を入れている(27日午前、北九州市小倉北区のJR九州ステーションホテル小倉で)=田中勝美撮影

 コロナ禍で1割台まで落ち込んだ稼働率は、昨年10月に同市で開かれた「世界体操・新体操選手権」の効果もあり、8~9割に回復していた。その後もワクチン接種や陰性証明の活用で一定の集客が維持できると見込み、昨年12月には、従業員と客との接触を避けるための自動チェックイン機器を導入するなど感染対策に力を入れてきた。

 さらに、今月11日に福岡県が導入した宿泊施設版の認証制度にも手を挙げた。宿泊客の検温や浴室の密集防止など31項目の順守を条件に認証を与えるもので、23日までに申請があった約150件のうち同ホテルなど3施設が認証された。

 制度の導入は対策を徹底して観光を楽しんでもらう狙いだったが、オミクロン株の拡大で状況は一変した。県は「収束まで需要喚起はできない」と、県民と近隣県民を対象に「ワクチン・検査パッケージ」の活用を条件にした旅行割引の販売を停止し、28日からは販売分の利用も止まる。

 重点措置下で飲食店と違って協力金もなく、酒類提供が認められるような認証によるメリットもない。帯山さんは「(金銭支援など)何らかの手を行政に打ってもらいたい」と要望した。

 宿泊施設の認証制度を昨夏取り入れた鹿児島県では約500施設が認証を受けている。一方、県は27日に県民らを対象にした旅行割引販売を止めた。認証を受けている鹿児島市の「ホテル・レクストン鹿児島」は、年明けから予約の半分以上がキャンセルになったという。海野善文支配人(48)は「認証はお客様の安心材料になるが、今回は状況が違う。耐えるしかない」と厳しい表情を浮かべた。

 27日から重点措置が適用された大分県も旅行割引の予約を21日に停止し、温泉旅館が厳しい状況に追い込まれているが、全国有数の温泉地・由布院の温泉旅館組合は収束後を見据えて動き出している。

 冨永希一組合長(47)によると、組合は2月20日までの適用期間後に向けて感染対策を徹底した宿を認証する独自制度の準備を進めており、3月までの導入を目指す。冨永組合長は「収束後の旅行では安全、安心がより重要になる。一過性ではない取り組みをして備えたい」と話した。

福岡など4県、認証店は酒類可

 27日から重点措置の対象となった福岡、佐賀、大分、鹿児島の4県はいずれも飲食店に対し、感染防止策が認められた「認証店」に酒類提供を認める対応を取った。営業時間は認証店が午後9時まで、それ以外は同8時までとする。

 27日夕、大分市の繁華街・都町は人通りが少なく、営業時間短縮や休業の貼り紙をした飲食店が目立った。認証店の「金太寿司」は当面は酒を提供するが、客の入り次第では、休業か、酒を出さずに午後8時まで営業するか判断するという。

 数件あった団体予約も感染拡大で全てキャンセルになった。店主の森一太さん(72)は「協力金は出るが、家賃や光熱費は賄えない。感染拡大は最後になってほしい」と語った。

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2710368 0 ニュース 2022/01/28 08:19:00 2022/01/28 08:34:13 2022/01/28 08:34:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220128-OYTNI50003-T.jpg?type=thumbnail

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