ANAの再生燃料、企業がコスト分担 出張利用で証書
全日本空輸(ANA)は廃油や植物を原料とした「持続可能な再生燃料(SAF)」の活用を広げる。20日、航空機で出張する企業がSAFのコストを一部負担する代わりに、二酸化炭素(CO2)を削減できたことを証明する証書の発行を受けられるプログラムを始めた。
2021年10月に貨物を運ぶ事業者向けに先行で開始していたが、「SAFフライトイニシアチブ」の第2弾として対象を広げる。4月以降の出張利用を対象に参加企業を募る。
プログラム参加企業が出張で使ったANAの運航便の利用実績に応じて、どの程度の二酸化炭素(CO2)削減に貢献したかをANAが算出。企業はANAから発行された証書を投資家などに対する情報開示に利用できる。
料金の詳細は原料の変動コストなどをふまえて決める。通常の航空機利用でかかる航空運賃や燃油サーチャージとは別に料金を得る。
脱炭素の流れが進み、上場企業は出張などの際のCO2排出量も情報開示が求められるようになっている。まずは東証が創設するプライム市場に上場する大手企業など、航空機の利用が多い企業の参加を見込む。
新型コロナウイルスの感染拡大で出張は減少しているが、企業活動に関わる環境負荷の開示が世界的に求められる中で、一定のニーズがあると見込む。
航空業界が排出するCO2の9割は、原油由来のジェット燃料を使った運航から出る。SAFを使うと、運航で出るCO2排出量の8~9割を実質的に削減できる。しかし、世界のSAF供給量は航空燃料全体の1%以下で、コストも既存のジェット燃料の3~5倍と高い。
SAFを商用生産できるのは現在、欧米企業のみで、日本での国産化が急がれる。ANAは安定調達に向けた供給網の構築に向け、企業への周知を進める。協力企業を増やすことでコストを輸送網全体で負担できる仕組みを目指す。
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