タイ首都の玄関口が歴史に幕 フアランポーン駅
【バンコク=共同】タイの首都バンコクの玄関口として、旅行客らに100年以上にわたって親しまれてきた国鉄フアランポーン駅が、12月中にも歴史に幕を下ろそうとしている。8月に新たに開業したバンスー中央駅に機能を移転するためで、観光客や地元住民から別れを惜しむ声が上がっている。
フアランポーン駅の正式名はバンコク駅。1916年落成で、タイで現存する最古の駅だ。イタリア人建築家、故マリオ・タマーニョ氏の設計で、ドイツのフランクフルト中央駅をモデルにデザインされたドーム型の屋根が特徴。光が差し込むステンドグラスは趣を感じさせる。
正面玄関の噴水下は第2次大戦中に壕(ごう)として使用された。27~69年には構内にホテルも営業していた。
ピーク時の年間利用者は約8千万人に上ったが、新型コロナウイルス流行を受け、昨年は約3500万人まで減少した。
当初は2023年に廃止する計画だったが、運輸省は最近、今年12月23日までに運用を終える予定だと発表した。駅舎は商業施設や博物館として引き続き活用する方針。
南部の国境近くに向かう美容師マロイーさん(40)は今回、あえて鉄道の旅を選んだ。「若くてお金がないころはよく鉄道に乗った。この駅を利用する最後の機会になるかもしれないと思うと悲しい」と残念そうだ。
10年以上駅を拠点にしてきた三輪タクシー「トゥクトゥク」の運転手ウッティサックさん(34)は「駅を目的に来る旅行客も多かった。引き続き人が集まる場所にしてほしい」と惜しんだ。