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政府の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が30日を期限に解除されることを受け、外食や観光の関連業界では営業再開に向けた対応が急ピッチで進んだ。酒類や食材が次々と出荷され、旅行の予約も急増したが、既に大幅な人員削減に踏み切った飲食店は人手不足に悩む。一部では営業再開が遅れる恐れが出ている。
掃除や洗浄
「ようやくお客さんにビールを飲んでもらえる。酒類の提供ができないのは、居酒屋にとって魂を抜かれているのと同じだった」
居酒屋「駒八」の社長(73)は、夜間営業の再開に向けて期待を込めた。東京・田町など7店でランチ営業や持ち帰りのみに切り替えて営業を続けてきたが、売り上げはコロナ禍前の2割程度に落ち込んでいた。9月27日から店の掃除やビールサーバーの洗浄などの作業を進めてきた。
ただ、営業再開には懸念もある。居酒屋「つぼ八」はアルバイトの募集を始め、ワタミは休業に伴いスーパーなどに出向している社員を呼び戻している。それでも「掛け持ちしている人が多く、急には呼び戻せない」(ワタミ)。店舗によっては人繰りがつかず、再開まで時間がかかる可能性があるという。
卸業者活況
飲食店から卸売業者への注文が増えている。
「お酒を中心に動き出した。すごい勢いだ」。酒類卸問屋「佐々木」(東京都新宿区)の社長(66)は、注文の急増に驚く。これまでソフトドリンクやノンアルコール飲料が売り上げの8割を占めていたが、今はアルコールが9割近くを占める。
東京・豊洲市場の仲卸「山八」はウニやアナゴ、鮮魚などを東京近郊のすし店を中心に卸している。担当者は「感覚としてコロナ禍前より取引量は2~3割程度落ちたが、宣言解除を見据えて週明けあたりからお客さんや取引が増えてきている」と話す。
観光も加速
秋の行楽シーズンを前に観光業界でも準備が加速している。旅行予約サイト運営のエアトリは、直近1週間の予約件数が9月最初の1週間に比べて倍増した。沖縄や北海道が人気という。読売旅行は1日から、添乗員付き団体ツアーの参加者にワクチンを2回接種済みか、3日以内の検査で陰性だったことを示す書類の提示を求める。
ANAホールディングスによると、9月29日だけで10月分の国内線予約数が5万人に上った。同じ10月分の予約でも、9月前半時点では1日平均5000人しかなく、予約ペースは半月で10倍に急増した。日本航空の10月の国内線予約数も大幅に伸びている。