知っておきたいワクチン証明書 どう申請?海外は?
7月26日からワクチン接種証明書の申請が始まりました。海外に渡航する人が使うことを想定しています。地方自治体の窓口での申請方法や用意する書類、欧州連合(EU)など海外での活用事例などを解説します。
証明書の内容や申請方法は
証明書には接種したワクチンの種類(メーカーや接種した年月日)と接種者の氏名、生年月日、パスポート番号が記載されます。費用は当面国費で負担し、申請者に手数料はかかりません。
申請する人は①申請書②パスポート③接種券④接種済証か接種記録書を用意し、市区町村の窓口への持参や郵送で申請します。パスポートに旧姓や別姓の記載がある場合は確認できる書類が必要になります。
郵送のみという地方自治体も目立ちます。発行まで1週間程度など一定の時間が必要な場合もあります。各市区町村がウェブサイトやコールセンターなどで申請書や具体的な手続きを案内している場合も多く、確認した方が良さそうです。
接種券を紛失した場合はマイナンバーが確認できる住民票の写しなどが必要です。接種済証や接種記録書を紛失した場合は予診票の写しでも代替できます。
市区町村はワクチン接種記録システム(VRS)の接種データと照合して証明書を発行します。偽造防止のためコピー防止機能の付いた用紙が使われます。1度の申請につき原則1部が発行されます。再申請のたびに1部を発行し、回数の制限はありません。
まずは紙での申請、発行ですが、年内にもオンラインで申請・発行できるようにし、スマートフォンのアプリを活用した方式の導入も想定しています。
海外渡航時の使用を想定
飛行機の搭乗や海外での入国審査、宿泊などの際に提示できるようにします。旅行者やビジネス・留学で渡航する日本人、日本に滞在中で母国に戻る外国人らの利用を見込んでいます。
証明書の保有者が入国後の隔離免除などで優遇される国としてイタリアやオーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドがあがっています。対象国や渡航の際の条件など最新の情報は外務省がウェブサイトで案内します。
日本政府はほかの国にも対応を働きかけています。緩和要件に外国の接種証明書を原則採用していない米国や中国、英国やアジアの多くの国は当面は対象から外れています。
国内での利用は当面想定していません。イベント参加などで観客の選別につながりかねないためです。アレルギーなど事情があって希望しても接種できない人もいます。
経団連は証明書などを使った飲食店や商業施設での優遇措置といった国内活用を提言しています。
イベントなど世界で活用進む
日本以外に目を向けると、国境を越える移動に加え、イベントへの参加などでもワクチン接種証明書を活用する動きが出ています。
欧州連合(EU)は7月1日から域内で「デジタルCOVID証明書」を本格運用しています。
ワクチン接種の完了、感染からの回復や検査履歴も証明できるもので、EU加盟国やスイスなど33カ国で有効です。偽造を防止するデジタル署名付きのQRコードを示せば出入国時の検査や自主隔離が免除されます。発行数はすでに2億件を超えました。
英国は国民医療制度(NHS)のアプリで接種証明書を確認できるようになっています。英BBCによれば、2万人以上を収容するすべてのスポーツ会場に対し、9月末から接種証明書提示を義務付ける計画が検討されているそうです。
ロンドンで開いたサッカーのヨーロッパ選手権決勝で収容定員の75%を上限に観客の入場を認めました。証明書かウイルス検査の陰性証明を持つ約6万人の観客が入場しました。テニスのウィンブルドン選手権でもセンターコートに満員の観客を入れました。
フランスも8月から飲食店の利用時などに証明書の提示を義務付けると発表しています。
イタリアでは8月6日から飲食店や映画館の利用時にワクチン接種などを記録した「グリーンパス」の提示を義務付けます。
グリーンパスとは、少なくとも1回のワクチン接種や48時間以内の検査での陰性、新型コロナウイルスからの回復を記録したもので、イタリア当局が発行しています。違反した事業者や国民には罰金を科す方針です。
米国やアジアの導入状況は
米国政府は連邦レベルでは証明書を導入しないとの方針です。州政府レベルでは推進する州がある一方で、禁じる州もあり対応が分かれています。
ニューヨーク州は「Excelsior Pass(エクセルシオール・パス)」という名称の「パスポート」を発行しています。ワクチン接種を受けた人が店を訪れたり、イベントに参加したりするための証明書です。
ウェブサイトで自身の情報を入力することで、ワクチン接種済み、検査の陰性などを証明する「QRコード」付き証明書が発行されます。取得した証明書は、アプリ上で表示できるほか、プリントアウトの利用も可能。ヤンキースの試合や大規模なコンサートなどへの入場に利用できます。
東南アジアは国際的な観光地を中心にワクチン接種をした外国人観光客の受け入れ再開が始まっています。
タイは7月1日、プーケットで接種済みの旅行者には入国後の隔離義務を免除する措置を開始しました。観光客の体調と行動を同時に追えるウエアラブル端末「スマートリストバンド」も感染対策に投入しています。
インドネシアもバリ島で7月下旬の実施を計画しています。各国では変異ウイルスが広がっており、先行きには不透明な部分もあります。
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