お台場を「日本のハワイ」に 東京・港区の清家愛区長が意欲 シンガポール修学旅行は継続

インタビューに答える東京都港区の清家愛区長=区役所(渡辺浩撮影)
インタビューに答える東京都港区の清家愛区長=区役所(渡辺浩撮影)

昨年6月に就任した東京都港区の清家愛区長が産経新聞のインタビューに応じ、お台場の水質を改善してリゾート地の雰囲気を味わえる「日本のハワイ」を目指すなど、国際都市としての街づくりへ意欲を語った。また、国際人材の育成のため公立中のシンガポール修学旅行を継続するほか、子供たちを区内の外国人家庭にホームステイさせる新規事業を推進することを明らかにした。

水質改善へセーヌ川と協調

――区長は元産経新聞記者で、私も一緒に仕事をしたが、記者の経験はどう生かされているか

「現場を見る、現場の声を聞くという基本を今も心掛けている」

――港区の将来像をどう描いているか

「高いポテンシャルを生かして世界をリードする国際都市をつくりたい。例えば、ウオーターフロントのお台場を『日本のハワイ』にしたい。砂浜、ホテル、ショッピングセンターと条件はそろっている」

――お台場は水質基準を満たしておらず遊泳禁止だ。泳ぎたいと思う人はいないのでは

昨年の「お台場プラージュ」の様子=東京都港区台場(区提供)
昨年の「お台場プラージュ」の様子=東京都港区台場(区提供)

「港区は、東京五輪・パラリンピックのトライアスロン会場となった都立お台場海浜公園で『お台場プラージュ』という海水浴イベントをパリ市と開催している。さらには今年3月、セーヌ川に面しモンパルナス駅があるパリ市15区と国際友好都市提携を結んだ。今後、さまざまな分野で連携を深める。『泳げる海、お台場』『泳げるセーヌ』も両都市で目指していきたい」

――パリ五輪ではセーヌ川を泳いだトライアスロン選手が相次いで体調を崩した。「汚水つながり」ということか

「たまたま同じ課題を抱えていて、また、その課題を解決して都市部での水浴を実現しようという共通の目標を掲げていた。お台場の水質悪化の根本原因は、強い雨が降ると市街地を浸水から守るために合流式下水道から汚水まじりの雨水が放流されることにあるので、東京都と協力して対策したい。お台場の海には都が巨大噴水の整備を計画している。観光面への期待だけでなく、注目されることで水質改善の機運醸成にもつながっていくとよい。同様に芝浦を美化して、水上バスやボートが行き交い、おしゃれな店が並ぶ『日本のベネチア』にしたい」

――六本木や麻布の将来はどうか

「港区は長年、六本木にある米軍基地『赤坂プレスセンター』の返還を求めている。頻繁に米軍ヘリが離着陸しており、現状では区民の安全と安心が守れない。自衛隊の統合作戦司令部が創設されたことに伴って、赤坂プレスセンターに日本側との連絡調整を行う部署ができるそうだが、基地の恒久化につながるため防衛省に懸念を伝えた。基地上空は羽田空港の新飛行ルートと重なっており、ますます危険性が高まっている。日米同盟などの防衛政策については国のレベルで方向性を決めていくことだが、都心のビルの谷間に米軍基地があるのは好ましくない」

区内の外国人家庭で「留学」

インタビューに答える東京都港区の清家愛区長=区役所(渡辺浩撮影)
インタビューに答える東京都港区の清家愛区長=区役所(渡辺浩撮影)

――港区には約80カ国の在日大使館などがある

「そうした地域特性を踏まえ、英語を母語とする講師『ネイティブティーチャー』を全ての区立幼稚園や区直営の保育園に派遣している。また、昨年度から全ての区立中でシンガポールへの修学旅行を行っている。公立中の海外への修学旅行は都内で初めてだ。シンガポールを選んだのは、公用語が英語で、移動時間や時差が少ない、治安が比較的よい―などが理由だ。現地での学習内容の充実を図りながら、より良いものにしていきたい」

――外国人が人口の8%を占めている

「18歳以下の区民が区内の外国人住民の自宅にホームステイして外国語とその国の文化に直接に触れたり、多様な文化を体験したり、外国人と英語でミッションをクリアしながらまち歩きをして交流を深める『MINATOまるごと留学』を今年度から始める。先ほど話したパリ市15区の関係では、学校給食にフランス料理を取り入れるといった交流も行う」

――教育の面ではかなり国際化するということか

「基本は日本の伝統文化だ。高輪ゲートウェイシティが3月27日に一部開業したが、再開発の過程で明治の鉄道遺構『高輪築堤』が出土した。また、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の『世界の記憶』に増上寺の『三種の仏教聖典叢書(そうしょ)』が登録されることが正式決定した。こうした文化財を大切にしていきたい。港区では今年度、積極的に文化財を公開・活用する取り組みに対する100万円を上限とする文化財保護奨励金の補助を新設した。赤坂氷川祭の山車人形のような、特定文化財のレプリカ作成の取り組みなどに活用してもらえるはずだ。日本の伝統文化を守りつつ国際化をさらに進めたい」(聞き手 渡辺浩)

せいけ・あい 昭和49年、東京都港区東麻布生まれ。青山学院大国際政治経済学部を卒業後、産経新聞の千葉総局、静岡支局、東京本社社会部で事件や行政を担当した。結婚・出産を機に退職。子供を保育園に入れられなかった経験から「港区ママの会」を主宰し、ブログで現場の声を発信した。区議を4期務め、昨年6月に区長に初当選した。著書に「保育園浪人」。

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