ペットと一緒に旅行、同伴での入場・宿泊認める動き広がる…独自サービス提供するホテルも
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愛犬や愛猫と一緒に旅行を楽しむ「ペットツーリズム」への注目が高まっている。「ペットと旅行がしたい」というニーズを踏まえ、観光スポットではペットの入場を認める動きが広がりつつある。ペット連れの宿泊者に独自のサービスを提供するホテルも目立つ。(佐藤一輝)
■好評で2回目
JR西日本が委託運営する京都鉄道博物館(京都市下京区)は昨年11月、ペットの入場を認める1日限定のイベントを開催した。愛犬家ら約130人が訪れ、ペットと蒸気機関車の記念撮影などを楽しんだ。

昨春に初めて開催したところ、好評だったことから2度目が決まったといい、担当者は「人手の確保などの課題をクリアできれば、定期的に開きたい」と話す。
群馬県富岡市の世界遺産・富岡製糸場は、2023年3月から屋外の施設限定で、体重20キロ以内の犬と猫の入場を許可している。これまで2200匹以上が訪れたという。安全面から、ペットカートに乗せることなどを義務づけている。
■進む差別化
ペットと一緒に泊まれるホテルも増えている。昨年9月、JR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期」に開業した「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」は、犬や猫との宿泊に特化した部屋を計5室用意した。
ペット用のマットやケージ、トイレなどを備えているほか、館内にはペットと一緒に食事できるカフェも設けた。

ペットと同伴可能な宿泊施設を紹介するサイト「ペット宿ドットコム」には、全国で約800軒が登録されている。担当者は「最近はペット向けの食事を充実させたり、ドッグランを設置したりして差別化する施設も多い」と説明する。
■万博は断念
ペットフードを開発する「バイオフィリア」(東京)が昨秋に全国の愛犬家約1000人に実施した調査では、旅先を検討する際に「愛犬を連れて行けるかを考慮する」と答えた人が95・8%に上った。ペットフード協会によると、犬と猫の昨年の推計飼育数は計1595万匹。人間の15歳未満の子供(1401万人)より多く、ペットツーリズムはビジネスチャンスを広げる可能性がある。
一方で、アレルギーのある人への配慮や他人にけがをさせるリスクから、ペットの受け入れに否定的な考えも根強い。4月開幕の大阪・関西万博は、史上初の「ペット同伴可能な万博」を目指したが、反対の声が多く、断念した。
ペットツーリズムに詳しい東洋大の東海林克彦名誉教授は「ペットを飼う人の多くは『旅行に行きづらい』という悩みがあり、ペット受け入れは旅行需要の喚起につながる。機運を高めるには飼い主のマナーを徹底することも重要だ」と指摘している。