訪日客人気が追い風、酒蔵ツーリズムで関心増 「伝統的酒造り」の無形文化遺産登録

日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」が無形文化遺産に登録され、笑顔を見せるユネスコ日本政府代表部の加納雄大大使(右)=4日、アスンシオン(AP=共同)
日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」が無形文化遺産に登録され、笑顔を見せるユネスコ日本政府代表部の加納雄大大使(右)=4日、アスンシオン(AP=共同)

国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間委員会が4日(日本時間5日)、「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録した。日本酒などの国内消費が冷え込む中、酒造会社などは「酒蔵ツーリズム」に参加した訪日外国人客(インバウンド)による波及効果と海外展開に期待を込める。

観光庁が公表している令和5年の訪日外国人消費動向調査によると、日本でしたことのうち、「日本の酒を飲むこと(日本酒・焼酎等)」と答えた割合は51%と全体で5番目に高かった。このうち満足した人の割合も91・3%と高い。

こうした訪日外国人客の直接的な消費が、国内需要を押し上げるだけでなく、「日本の酒を知った観光客が母国に戻り、認知度が広がれば海外展開にもはずみがつく」(国税庁担当者)と期待する。

国税庁によると、国内の清酒の販売(消費)数量は平成元年度の135万キロリットルから令和4年度には40万キロリットルにまで減少。このまま消費低迷が続けば酒造りの事業規模は縮小を余儀なくされるため、海外への販路拡大はどの酒造会社にとっても死活問題だ。

その一助として注目されるのが、実際に酒造りを体験できたり、併設のレストランで試飲できたりする「酒蔵ツーリズム」だ。酒蔵ツーリズムは、国の「クールジャパン」戦略が始まった平成25年ごろから本格化。国の令和6年度予算では、海外販路拡大と酒蔵ツーリズムの取り組み支援事業として約7億円が計上されている。

日本酒蔵ツーリズム推進協議会によると、全国約1500の酒蔵のうち、常時ツアーが可能な酒蔵は1割程度で受け入れ体制の整備が課題。同協議会の担当者は「ツアーを利用するインバウンドは増えていて、事業展開の好機だ。文化遺産の登録は日本の酒を世界に発信できる意味でも大きい」と歓迎する。(楠城泰介)

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