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「ぜひトキエアの新潟―札幌・丘珠線に乗ってください」――。佐渡市の商工観光団体などでつくる「佐渡新航空路開設促進協議会」会長の本間雅博(63)は1月31日の就航にあわせ、島民にこう呼びかけてきた。
トキエアの計画では、佐渡空港と首都圏を結ぶ定期路線を今年中にも就航させる。同空港の定期路線は2014年以来途絶えており、復活すれば10年ぶりとなる。
今夏には「
「今のうちからトキエアを応援したい」と、佐渡連合商工会会長でもある本間は声を弾ませる。実際に、北海道を旅行先に選ぶ島民も出てきているという。
佐渡空港では既に、トキエア受け入れを見据えた工事が昨年秋から急ピッチで進められている。県によると、滑走路とエプロンをつなぐ誘導路の拡幅や滑走路の補強、今までなかった風速計などの観測機器の導入といった工事を実施する。3月末の完了を目指す。
佐渡市も24年度当初予算案に、島民の航空運賃を一部負担する費用など計2300万円を盛り込み、トキエアを後押しする。JA佐渡は21年10月と早い段階でトキエア側と協定を結び、羽田空港で佐渡の農産品をPRする催しを開くなどしてきた。
この10年間、佐渡への旅客輸送は佐渡汽船が一手に担ってきた。ただ、同社常務の渡辺幸計は同じ交通事業者のトキエアについて「ライバルではない」と強調する。「(トキエア佐渡線の就航で)片道は船、片道は飛行機という選択肢ができる。連携して佐渡を元気にしたい」と語った。
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トキエアによると、計画通りに路線を拡充し、搭乗率を向上させられれば、年間50万人程度の利用者が見込める。新潟空港をハブとした往来の活発化への期待は、佐渡以外でも大きい。
4日の昼過ぎには、
芸妓たちは新潟ならではの花街文化や観光名所、飲食などをPRしようと、新潟商工会議所事業部長の小沢謙一らとともに丘珠行きのトキエアに乗り込んだ。現地の商工会議所やメディアを巡り、札幌政財界関係者らが出席したレセプションで舞も披露した。
小沢は「トキエアや古町芸妓の存在を初めて知り、『ぜひ新潟に行きたい』と言ってくれる人もいた。地道に浸透を図っていきたい」と、手応えを口にする。
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燕商工会議所会頭の田野隆夫は「全国的に知名度のある佐渡に就航し、(仙台、名古屋、神戸などの)大都市と新潟もつながることで全国から注目を浴び、多くの観光客に来てもらえる」と力説する。
田野はトキエアの構想段階から、地域密着型の航空会社をつくる意義を熱心に説く社長の長谷川政樹(56)の言葉に耳を傾けてきた。構想が具体化するにつれて積極的に手を貸すようになり、新潟商工会議所会頭の福田勝之らとともに、出資者との橋渡し役を担った。
「新潟は高速道や新幹線が早く整備されたが、その後は何もなかった」と、田野は振り返る。田野の地元で北陸自動車道「三条燕インターチェンジ(IC)」が供用開始されたのが1978年、上越新幹線「燕三条駅」が開業したのは82年だった。
「アピール下手」とも評される新潟は全国各地との誘客合戦で後れをとりがちで、田野も地元をいかに盛り上げるか苦心してきた。
トキエア誕生は、新潟が再び上昇気流に乗るきっかけになると期待している。「高速道や新幹線が整備されて以来の大きな出来事だ」。田野はそう力を込めた。(敬称略)
(この連載は中川慎之介、宮尾真菜、山田靖之が担当しました)