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松山市の観光名所・道後温泉本館(国重要文化財)の保存修理工事が大詰めを迎えている。全館での営業を再開する7月11日に合わせ、市は入浴料を値上げする。コロナ禍に入浴客が激減して実質的な赤字に転落し、現行の料金体系では赤字運営が続くと見込むためだ。財政
「道後温泉の売りは『源泉かけ流し』。加温や加水をせずに浴槽でおおむね42度になるよう、季節や気温によって様々な温度の源泉を混ぜる割合を変えている」。市の専門職員「汽缶士」の池田博憲さん(48)は、そう言って温度計を見つめた。
汽缶士は5人が交代で24時間、18本の源泉が集まる分湯場を管理し、同本館や民間の旅館・ホテルに湯を送る。いわば道後温泉の「心臓部」。一般的な温泉よりも人件費や設備の更新費用がかさむという。
同本館には、2017年度までは年間約80万人が訪れたが、修理工事が始まった18年度以降は入浴客が激減し、21年度は11万人にまで落ち込んだ。修理のため2種類の浴槽を片方ずつ営業したが、コロナ禍の20、21年度は計157日間の休館を余儀なくされた。
客離れにつながった工事が長期化したのは、建物が重文であるがゆえだ。例えば、2万枚以上ある屋根瓦は1枚ずつ状態を確認した。19年1月に始まった工事は、文化財調査を含めると24年12月まで続く。市道後温泉事務所は「一般の建物の改修工事と比べ、費用も時間も膨らんでいる」と明かす。
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