「春節」も中国発便の予約鈍く 日航はコロナ前の6割弱、ANAは5割 団体から個人主体にシフト

8日、春節を前にした北京首都国際空港。国内外に向かう人がチェックインカウンター前で行列を作っていた(三塚聖平撮影)
8日、春節を前にした北京首都国際空港。国内外に向かう人がチェックインカウンター前で行列を作っていた(三塚聖平撮影)

日本航空の2月の中国発の航空便の予約数が新型コロナウイルス禍前の平成31年と比較して6割弱、全日本空輸(ANA)は5割の水準にとどまっていることが10日、分かった。中華圏の旧正月「春節」の連休が始まったが、中国経済の回復の遅れなどを背景に訪日客の戻りは鈍い。

ANAの2月の東アジア、東南アジア路線の予約状況は、韓国路線がすでにコロナ禍前の31年を上回っており、シンガポールは9割、台湾とタイが8割の水準まで回復している。

ただ、中国は春節があるにもかかわらず、回復が遅れている。「春節の連休(2月10~17日)だけを捉えれば、予約率は7~8割に戻っているが、それ以外の期間に中国人客に来ていただいていない」(ANA広報部)状況だという。

中国は新型コロナの感染拡大を受けて制限してきた中国人の日本への団体旅行を昨年8月に解禁した。だが、訪日中国人客数は昨年12月時点で令和元年比4割程度にとどまり、春節での回復も限定的となっている。

不動産市況の低迷で中国景気の回復が思わしくないのが大きいが、一方で中国客の戻りが鈍いのは「客層が団体旅行から個人旅行主体にシフトしている」ことも背景にあると観光業界関係者は指摘する。物価高や人件費の上昇で国内の宿泊費が高騰し、「中国の旅行会社が団体旅行用のお得なツアーを用意できなくなった」(航空会社関係者)という。

国内ホテルでも客層に変化がみられる。西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、今年2月のプリンスホテル全体の中国人客の予約は売り上げベースでコロナ禍前の平成31年2月と比べて約8割の水準。個人旅行に限ってみると「コロナ禍前の水準にまで回復している」(広報部)。中国人の個人旅行客には富裕層が多く、消費単価の高い顧客を取り込むためのサービスの重要性が今後は一層高まりそうだ。(万福博之)

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